第7話 俺は待ち合わせ場所へ向かうから描けない

 集合場所は駅前のステンドグラス前と提案された。


 この地域では待ち合わせ場所として普通の事だが、十五分前に到着しただけで、普段とは違う現場の雰囲気を感じる。


 改札前からでも肌をざわつかせる感触、七彩が関与してないと良いな思いつつ、ステンドグラス前に歩みを進める。


「おお……囲いができてる」


 本来なら等間隔に並んでいる待ち人も、七彩=フォックスを中心に数メートルの距離を保ちつつ、不自然な円が生まれていた。


 それも仕方のないことかもしれない。


 七彩の身長は女子にしては比較的高く、腰の位置も高いので足が長い。

 普段ストレートにしている金髪は頭の後ろでお団子のように結って、春色の清楚なワンピース姿により、更に非現実感を演出していた。


 たたずむ姿もスマートフォンを手に取ることなく、伊達メガネを整えたり、たまに前髪を指で軽くすく。

 それだけで通りをいく男女の視線をすべて集めるのだから、近寄りがたいのも頷ける。


 誰もが海外からお忍びで日本へと訪れた、ハリウッド女優に見えている事だろう。


「風花様にはお土産を買って行ってあげないとな」


 学校では不本意ながら奇行師と呼ばれる俺も、外では一般常識を持ち合わせているつもりだ。


 多少ファッションセンスは無かったかもしれないが、大富豪のお嬢様のような七彩と歩くのならば、朝のやり取りは妹に土下座しても足りないくらいである。


「ごめん、待たせたな七彩」

「ううん、少し早いくらいだよ――って、アキちゃんなの!?」


 お嬢様の待ち人は誰なのか、周囲の眼差しを一身に受けた俺を前に、七彩はさらに驚いていた。


「そんなに変か?」


 自分の姿を見渡してみる。


 服装は白いワイシャツと黒のスラックスというシンプルな服装。

 いつもの長い前髪と後ろ髪はヘアワックスにより、癖毛ヘアーとしてセットしてくれたので、久々に両目がよく見える。


 父親の部屋から見つけてきた丸型メガネは、普段の漫画道一本道感を緩和させ、今ではサブカル好きなバンド系オシャレな男子に見えなくもない。


「へ、変じゃない、全然! ……普通の姿だとこんなにカッコ良いんだ……」

「何か言ったか?」

「ど、どこ行こうかなって」


 何故か慌てる七彩。


「本屋だろ、しかし七彩は相変わらず綺麗だな」


 今度、漫画のキャラクターの一案として参考になりそうなので、しっかりと目に焼き付ける。


「ふふん、今日は気合入れたからね。こだわりは、顔を見られても気絶しないようにメガネもかけたし、髪型も変えてみたんだ」

「確かに普段と違うせいか、身体がダルイ程度な気がする」

「もうちょっと、言い方はあるでしょ」


 ジト目で俺を見るも、「見た目は整ってもアキちゃんはアキちゃんか……」と溜息をつかれる。


「では本屋にいこういこうっ」


 お嬢様のたたずまいは何処へやら、ウキウキした子供のように足取り軽く本屋絵と向かうのであった。







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