第6話 俺は妹にダメだしされるから描けない

「ええええ、お兄ちゃんそれで外に出るの?」


 ゆるふわセミロングが似合う我が妹の風花は、ワンピース姿でアイスをくわえながら宿題をしていたが、口からアイスを落としそうになる。

 

「ん、ダメか?」


 俺はリビングで自分の姿を改めてみる。

 髪はいつも通り、前髪だけ長くて後ろ髪は縛っている。


 最近は暖かいので、服装も作務衣さむえで良かろうということで、足元は下駄を選んだ。


「完全に自称クリエイターをこじらせたおじさんの格好だから。

 アクセサリーとかチェーンつけまくってる小中学生の方がマシに見えるよ!」

「そんなに変なのか……草履の方が良かった?」

「惜しい、そこじゃない!」


 風花はノリで突っ込む。

 何故、兄にそこまでテンポよく返せるんだ。


「まてよ、確か中学校の時のTシャツならあったな」

「ロックすぎて破れてるTシャツはもう捨てたほうがいいよ……というか、この前、母さん捨ててた」


 うわあ、勝手に部屋に入られてる。


「そういえば、自分で描いたイラストのTシャツなら在庫があったな!」

「美少女イラストのでしょ? 上手いけどダメえ!」


 通販では結構売れたんだぞ、失礼な!


「あとは丁度いいの思いつかないぞ」


 過去に新人賞に応募する為に、通販で手に入れたメイド服や様々なは、クローゼットの奥に隠されているが、俺が着れるはずもない。


「なんで、あんなにスタイリッシュなイラストも描けるのに、自分の事になると無頓着なの?」

「……なんでだろうな?」


 描いているキャラと自分はやっぱ別だからだろうか。


「一緒に歩く人がかわいそう。

 外出したら近所の人に、春夏家のファッションセンスが疑われるから、二度と出ないで欲しい」


 中学一年生の風花にそこまで不評なのだから、きっとこの世のものとは思えないファッションセンスなのだろう。


「他に何かないの?」

「ジャージと制服なら」

「ううん……あ、ちょっと待ってて」


 風花はぴょこんとソファーから立ち上がって、色々手にしてすぐ戻ってくる。


「わたしのお兄ちゃんはね、ちゃんとしてれば、かっこいいんだから」


 風花は父親のヘアスプレーで髪をヘアアレンジしてくれる。


「あとはお父さんのこの辺をうまく使ってカバーしてみよっか」


 鼻歌交じりに、我が家の完璧スタイリストである妹様が、なんやかんやで身の回りを整えてくれた。


 親父殿が買ってから一度も使わなかった武装も、今ここで役に立っているのできっと浮かばれる事だろう。


 妹は誰と出かけるのか理解はしていないようだが、木上と出かけるとは思っていないようだった。

 女の勘とはやはり凄いもので、結果的に俺はこの後、風花に足を向けて寝られないことになる――。







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