第2話 欲情なんてしないくせに
「とりあえず、今週中に俺も課題は終わらせるとして……俺もカメラのレンズ買いにいかなきゃな」
「え、結局話してたレンズ買ってくれるの?」
「高いけど、まぁこれからのことを考えると安い投資だ」
俺だって、ただエロいコスプレを見ているだけではない。
コスプレイヤーとしての桃春のカメラマンや、SNS運営などのサポートもしている。
マネージャーと言ったところだ。
「それに、この前の案件で多少余裕は出来たから」
「あの撮影で知名度がグンと上がったもんね」
魔法少女として活動するのには、それはもう衣装代やその他諸々の小物作りでお金がかかる。
最初はバイトをしてある程度稼いでいたが、限界があった。
そこで俺と桃春は、コスプレイヤーとカメラマンのコンビでお金を稼いでいる。
これならやりたいこともでき、お金も稼げて一石二鳥。一種のビジネスというわけだ。
とはいえ、本人は魔法少女になるためだと思って、仕事という感じは全くしないらしい。
この前は、『これも魔法少女になるための試練』とか言って頑張ってたし。
マジで、どこまでポジティブなんだよ……。
「今回は大きいイベントだから絶対注目浴びるよ私!」
衣装を眺めながら、小さくガッツポーズをする桃春。
「最近の投稿も伸びてるし、撮影の行列は間違いなしかもな」
「……もっと、もっと有名になって……私は魔法を手に入れるんだ!」
魔法少女に対する熱量は、もう既に誰よりも勝ってると思うけどな。
とんでもないJKに育ってしまったよ全く。
俺もこの熱は小学生で収まると思ってたが、まさかここまで続いて本格的になるとは思ってもいかなかった。
普通、幼馴染が小さい頃からしていたことが成功するとエモいものだが……さほどその感情はない。
唯一嬉しいことは、間近で体の成長を見れたことくらいだ。
まさかここまで立派に成長するとも思っていなかったよ。
「真の魔法少女になれるといいな……」
つい、フッと苦笑いが漏れてしまう。
神様、これを見てるんだろ?
魔法少女に本当になりたい女子高生がここにいるんだぞ?
この頑張りを称えて、魔法の一つや二つくらい使えるようにさせてやってくれよ……。
「ねぇ、淳」
何かを思い出したかのように、桃春はハっとして俺の肩を叩く。
「なんだ?」
「いつまで私の衣装の胸元、握ってるの?」
俺の手を指差すし、俺もその目線を追う。
すると、確かに俺は桃春の衣装。それも胸の部分を無意識に触っていた。
「や、これは……」
なんか手元にあって、触り心地が良くて、無性にそれが落ち着いて。
つい触ってしまっていた。
咄嗟に手を離し、小っ恥ずかしくて顔を手で覆う。
流石に怒られたり、引かれたりすると思っていたのだが、
「もー、淳はエッチなんだから。でも、幼馴染の衣装の胸元触ったって欲情なんてしないくせに」
細い目をして笑いながら、手を離した衣装を自分の方へ手繰り寄せる。
畳み直そうと、さりげなく後ろを向く桃春だったが、その仕草が妙に不自然。
しゅんと丸くなった背中に、おぼつかない手元。チラリと見える耳はじんわりと赤いような気がしていた。
まさか、まさかな?
この程度で桃春が俺に対して恥ずかしいなんて感情が湧くわけがない。
だって着替えを見られても微妙だにしないんだぞ?
魔法少女になりたいとはいえ、エロいコスプレを見せてるわけだし。
そっちの方が恥ずかしいに決まっている。
魔法少女熱が恥ずかしさに勝っているということは考えられなくはないけど……桃春に限ってそれはないよな。
次の更新予定
毎日 18:11 予定は変更される可能性があります
幼馴染は魔法少女(仮) もんすたー @monsteramuamu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幼馴染は魔法少女(仮)の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます