第13話 女子トーク
「えー。カロルス様と会ったの? いいなぁ……」
今朝の事を愚痴ったのに、カタリナが羨ましそうな声を出した。
全然分かってくれてない。とりあえずふくれる。
「よくないって。イチャモンつけられたんだから」
「カロルスさまはご家族のことを大切に思っていらっしゃるからね。特に兄上である旦那さまには幸せになってもらいたいと思っているのよ」
ルチッラがそう説明してくれる。でも私は『ふーん』としか思わない。
「そうなんですか?」
でも、とりあえず興味があるフリして聞いてみる。
「そうよ。兄夫妻の邪魔にならないようにって自ら離れに移ったくらいなんだから」
そうなんだ。お坊っちゃまが、今、五歳だから、それよりも前なはず。と、いうことは六、七年前くらい?
ん? カロルス様って確か私よりちょっと上くらいに見えたけど? 今は二十歳くらいじゃない? その六、七年前って中学生の年齢では?
おい! 旦那様! 何考えてんのあの人!!! ポップコーンの事といい責任感なさすぎでは?
「モエ? 大体何考えてるのか分かるけど、カロルス様が離れに引っ越したのは成人した後よ。今から二年くらい前」
ルチッラが私が怒ってるのを見て呆れ顔で訂正してくる。よかったぁ。とりあえずホッとする。
「そんなカロルス様が本邸の近くの厩まで来たんだから、相当気になったんじゃないの?」
「だから私、そんな気ないのに」
ため息を吐きたくなる。
「そんな事はカロルスさまには分からないからねぇ……」
そーだよねー。カタリナは最初から信じてくれてるし、ルチッラにはこの間廊下で本音をぶちまけたから分かってくれたけど、初対面のカロルス様には無理か。
「でも最初から喧嘩腰でくるのは違うと思うんですよねー」
またふくれる。だって腹が立ったんだもんっ!
「どんな話をしたのよ」
カタリナが興味津々という顔で聞いて来る。
「え? お前なんか認めないぞって言われただけだけど?」
さっきの事を思い出して眉がひそまるのが自分でも分かる。事情はわかったけど、なんなの、あの物言いは! ムカつくー!
「カロルス様がそんな事を言ったの?」
「それだけ腹たってたんでしょ。しょうがないよ」
私も腹たつけど、立場弱いしね。
気を取り直して仕事しなきゃ。今日はこの部屋の棚をピカピカにするんだ。
雑巾を使ってしっかりと磨く。
この人たちにポップコーン云々の事は言えないな。カロルス様じゃないけど、勝手にユニコーン様にふざけたあだ名をつけましたなんて印象最悪だし。
ま、奥様は知っているだろうけどね。
「で? これからもカロルス様と話したりするの?」
「うーん。どうだろ。まだ納得してなさそうだったし、また接触してくるかも」
本当はここで人と揉めたくはないんだけどなー。あのお客様といい、カロルス様といい、なんで私なんかに構ってくるんだろう。
そんなにユニコーンの乙女ってのが関係してるのかな。
「あの、ユニコーンの乙女ってそんなに珍しいものなんですか?」
「そうねえ。ここ五十年くらいは現れてないって聞くけど」
つまりそれ以前にあったって事か。私のような可哀想な女性が来たことが。
いや、本人が可哀想というのはどうなんだ? なんか悲劇のヒロインみたいじゃん。私、そんな柄じゃない。
以前に来た女性たちには心から同情する。私も当事者だから他人事じゃないんだけど。でもさっき思ったみたいな悲劇のヒロインにはなりたくないし。
全くあのポップコーンは何を考えてるんだろう。……ああ、ゼータクか。あの自己中馬め。
「だから、予想外だったんでしょうね、奥様はもちろんのこと、カロルス様も」
「それは分かりますけど……」
当事者としてはぶつぶつ言いたい。こっちだって迷惑なんだよ。やっぱりあのクソ馬のせいだ。
「まあ、いつかは分かってくれるよ」
カタリナがなだめるように言ってくれる。いい人だ。
「きっと、私たちにも何かアドバイス出来ることはあると思うよ。モエよりはカロルスさまの事知ってるし」
おまけにありがたい事まで言ってくれる。
「いいの?」
「もちろん、カロルスさまの話もまた聞きたいし」
ちょっと恥ずかしそうな顔でそんな事を言っている。
これは……もしかして?
つい唇がによによしてしまう。
「モエとも友達だし、二人の仲が悪いのはちょっと心配かな」
「うーん、なんかごめんねー」
絡んで来たのはカロルス様だけどねー。
「大変よね、モエも。愚痴くらいならいつでも聞くから」
ルチッラまでそんなことを言ってくれる。
「ありがとうございます」
素直にお礼を言う。
それでも、カロルス様の事、多少なりとも気になってるカタリナには悪口は言えないな。
でも、アドバイスがいただけるのはありがたい。またあったら軽くだけど相談しようかな。
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