Stage.2 ゲーム制作と深まる関係
Track.5 部活の仲間を探そう
Voice.9 どこかで聞いたことある気がするんだよね
――次の日の昼休み。
オレは、メガネと文豪と3人で屋上に居た。
オレは購買で買ってきたパンを食べる。
ブリックパックの飲みものを飲みながら、文豪が聞いた。
「なあ、ふと思ったけどゲーム作るのにどんな人が必要なの?」
メガネが数えるように指を折りながら言う。
「ネットで調べてみたけど、絵を描くイラストレーター、ソフトを作るプログラマーとかデバッガー、脚本を書くシナリオライターの他には、音楽を作る作曲家とか歌手、キャラクターに声をあてる声優が必要かな」
「へー。じゃあ少なくともオレ達入れて5人以上にはなるんだな」
文豪が言うと、メガネはうなずいた。
「2人とも、誰か部活に入ってくれそうな思い当たる人居ない?」
オレの頭に篠原の姿がよぎる。
「1人居る……けど……」
けど篠原がオレ達の部活に入るともしかしたら篠原の秘密がバレるかもしれないし……。
「けど?」
無意識に呟いた瞬間、2人に詰め寄られて思わず焦る。
オレはせいいっぱい取り繕った。
「けど……その人ゲームに興味ないって言ってたからオレ達の部活に入ってくれるかはわからないんだよな」
ごめん篠原、本当は興味あるよな。
すると、文豪が言った。
「でも、わからないってことは入ってくれるかもしれないってことか?」
とっさに口に出した細かい言葉の意味をツッコまれる。
さすが文豪、いつも小説書いてるだけあって鋭い。
「あ、あー……まあそういうこと……」
メガネが言った。
「じゃあオタク、その人に頼んでみてくれよ。『オレ達の部活に入ってほしい』って」
その展開は絶対避けたかったのに!
オレはそう心の中で叫んで、苦笑いをするしかなかった。
「……わかった。頼んでみる」
その後、5時間目の現国の授業が始まり、教壇に立っている女性の先生が言った。
「ではまず、今日授業でやる作品を誰かに音読してもらいます」
その言葉で、みんながいっせいに教科書で顔を隠して先生から目をそらしたり机に突っ伏したりして、先生に当てられないように対策する。
「音読って言った瞬間みんながそうするのはもう教員になって3年目だからわかってるのよねー。 誰にしようかなー」
先生はみんなのことをを見まわしてから、言った。
「じゃあ……篠原さん」
「は、はい!」
当てられた篠原は返事をする。
「と、それから横一列の人達、立って読んで」
よりによってオレも読まされるのかよ。
そして篠原は立ち上がって教科書を開いてから、音読を始めた。
篠原の声はやっぱり聞いていて心地がいい。
次にオレの番が来て、立ち上がって音読をする。
篠原の次にオレが読まなきゃいけないなんて恥ずかしい。
そして、順番に音読をしていき、一番端の女子の番が来た。
すると、その女子はまっすぐ立ち上がって音読を始める。
低めだけど透き通った綺麗な声だ。
音読を終えると、凛とした表情で座り直した。
立ち方から声に座り方まで、かっこいい、というのが第一印象だった。
すると、篠原がオレの肩を叩いた。
小声で話しかけられる。
「瀬尾くん」
「何?」
「今日の帰りにちょっと話があるんだけど」
「わかった」
――そして、放課後。
オレは篠原の家に来た。
「話って何?」
「今日の現国の時間に私達と一緒に音読した時、最後に音読した子居たでしょ?」
「うん」
「あの子の声、どこかで聞いたことある気がするんだよね」
「学校以外で?」
「うん。けっこう最近だった気がするんだけど……」
「オレには全然聞き覚えがないな」
「どこで聞いたんだろう」
篠原は不思議そうに首をひねっている。
「あ、そうだ。篠原」
「何? たっくん」
「オレとメガネと文豪と3人でゲーム制作部っていう部活作ろうって話してるんだけど、興味ある?」
「え!? ゲーム制作部!? 入りたい!」
「そう言うと思った。でも、もしかしたらオタクだってバレるかもしれないし、オレ達文化部と違って体育会系の演劇部と兼部になるだろ?」
「そこはバレないように私が頑張るところだよ。みんなも兼部するのは一緒だし、演技の経験を積むのはいいことだし。どんなゲーム作るかはもう決めたの?」
「作ろうと思ってるのはノベルゲームで、案で出てる話はこんな感じ」
そう言って、オレは昼休みに3人で考えた案をまとめた冊子を手渡した。
学園恋愛ものにファンタジー、いろいろな案を出した紙を、篠原は楽しそうに見てくれる。
「3人でもうこんなに考えたんだ」
「昼休みに3人でアイディア出し合ってたら盛り上がって、紙が1枚じゃ足りなくなった」
すると、篠原は笑顔で言った。
「私もどんなゲームになるか楽しみ。演技の勉強、頑張るからね!」
「オレもいい絵が描けるように頑張る」
――こうして、ゲーム制作部の部員が4人になった。
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