No.3

 ふかもりぼうそうはっさんを。

 けものも、にんげんも、おなオミナスさえことにせず。

 しかしわたしころせなかった。

 てんせいかいすうにして五〇〇〇と四〇すうかい――のぼろうとなずにきたはじめてのあいだったそうだ。

『ごきげんよう。東雲しののめくうきらいかな? しょうねん

 つみつみともおもわぬことを、たしかにげてやったとも。

 わたしのほうこそはじめてだった。

 くさにしきうほどかきみだれず、ぶんざいさまって、さてしもったくろがねめんにここはいずこかいもあえずになにをけたか。うまりだ。けいけんなどあるまいよ。

 あげく、そのあいはんにちかけてのらっろうぜきおよんだすえ、うらわかしょうねんへとへんぼうしたのだ。

 ほおかえなみだうすめ、さだまらぬひとみばつきゅう使つかってくるのだ。

 さきひろったのは、わたしだった。

『おいで』

 どうしてけよう。

 むつまじきそうらいっていたしょうげきむねはずませておきながら。

 ――ひろひろわれ、げんざいいたる。

 わたしあるじしろはなむしろつ。

 せまからぬあらしほうがくいんりょうしつにあらず。ふたりをかくしたほうはなひらいたさきには、くらやみだんしょくまえにわちいさきようかんがあった。

 しゅんかんどう。まさしくほうりょうぶんだ。

 わたしわたしほうをもってわたし理想郷ロクスソルスあるじかえる。これしきにもよおかんどうなどない。

 それよりあるじだ。

わたしほう、いつおぼえた?」

せつげっかせてくれるたびにちょっとずつ。みみのこるんだもん」

あるじそらんじずとものうには――」

「やだ、やめない」

あるじ

きみそうしたいから。あるじしもべのことをよくらなきゃだめでしょ?」

「……しょうふくした。さて、やかたはいろうか」

 うなずくあるじさきすすませ、わたしみぎへとあゆむ。まえにわかこれしたさくならんでかかるランプがばすは、ちょうらぬかげりんばたけだ。

 わたしあかじつもろやかただんっていった。

 あとはなべまかせよう。

あるじきみかいしんをひともどしておく。きみぼうそうしたことはゆうきゅうときぼうばくがごときとなるはずだ」

「ありがとうせつげっ

 テーブルにあるじかおをうつむけていた。

 からぬはなしだ。

 つみぶかからをいくらてようとこころにはきざまれる。おかしたざわり、におい、みみごこ、そのがっさいべつせずに。

ふくしゅうつづきだ」

 わたしはテーブルじょうしょくだいたずさえ、かたすみぐるまをむきしにするおおけいしんあやつる。

わたし理想郷ロクスソルスは『あるがいねん』とだんぜつしている」

「『くう』だっけ」

ましいな」

 ここはわたしせいぜんしきけっしゅうさせたぐう。ゆえに理想郷ロクスソルスぶ。

 ちたるはこころのみ。

 けれどもえず、しにがみとてけいそくさせる。

だれとがめにあらわれない。くまでやすんでいくといい」

 わたししょくだいをもとにもどす。

あるじわたしのぞんだとおりにぼうそうかんよくあつこころつつある。しっぱいかずだけむくわれるとも」

 とはいえ、わたしあるじだい――うちなるオミナスへのかいとういまはくひとしい。

 オミナスちからしょうあくできればさらなるたかみにいたれるのだ。てぬゆめだなどとはみとめない。

 そうあるじよ、はるらいおう。

「……しおどきだな。あるじたなからしょっはいしてほしい。ナイフ卓刃フォーク卓叉、ささやかなさらをふたりぶん

「あっりん!?」

のがしていたようだね」

ってて、すぐじゅんする!」

 あるじあわただしくアンティークなしょっだなした。

 ではわたしじゅんりかかろうか。えいきょうじるときだ。

 くちさびしさをあままぎらせ、かたわせてタブレットたんまつる。それもまた、やりなおしをいられたじんせいにふさわしきいちページとなろう。

 孤高ひとりいたわたしなのだから。

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