第八話 Moment of bliss
「行きたい所って観覧車…?」
深山君が最後に行きたいと言っていた場所。それは水族館の近くにある観覧車だった。
「あぁ。評判良いらしいから乗ってみたくて」
深山君もこういうの乗りたいって思うんだな〜いつか遊園地とかも行けたらいいなぁなんて思ってるうちに「行こう」と深山君が言い、彼の後ろに続いて歩き出す。
窓口で高校生の券を2枚買い、回ってきたゴンドラに乗り込む。ちなみにお金は深山くんが出してくれた。半ば無理矢理だったけど。意外と強情なとこもあるんだなと知らない一面を知ることが出来て幸せを感じる。
「今日は楽しかったよ」
乗り込んで少し開け深山君がそう口にする。
「私も楽しかった!またどこか行きたいな〜」
「そうだな」と深山君が言い観覧車の動く音だけが聞こえる。外を眺めると海が夕日に染められていた。観覧車ってどっちかと言えば夜に乗って夜景を楽しむイメージがあったけど夕方もいいかも。
対面に座っている深山君も景色を眺めている。でもなんだかソワソワ?してるような気もする…どうしたんだろ。
何も話さないまま頂上に着き少しずつ降りていく。
「…あのさ」
真剣な声色。窓の外に向けていた視線を深山君に移す。真剣でどこか覚悟を決めたようなそんな目。心臓が高鳴り始めた。自惚れてしまっていると思う。でもこれって…
「俺さ、渡良瀬に話しかけられた時なんだって思った」
真剣な眼差しのままその時のことを思い出しているような表情で
「昼飯の時も来るし最初の頃はなんか罰ゲームなのかなって思ってた」
「ち、違うよ!?」
思わず大きい声で反応してしまった。深山君は「分かってる」と続ける。
「でも今は違うって思うし俺もその…楽しい。あの時間が。」
「だから」と続ける。
「もっと渡良瀬と一緒に居たい。知りたい。だから…その…」
深山君の言葉が詰まる。こんな風に考えてくれている、それだけでも胸が満たされる。
すぅ…と息を吸いもう一度真剣なまなざしで向き直る。
「付き合ってください」
あぁ…これ夢じゃないよね。夢ならこのまま醒めないで欲しい。
目の奥が熱くなりやがて涙として流れていく。
「わ、渡良瀬!?ご、ごめん!」
そんな私を見てあたふたする深山君は少し間抜けで、でもそんな彼が私はどうしようも無いほど好きなのだ。
「ううん…嬉しすぎて、心が満たされすぎて…」
だから答えはずっと前から決まっている。
「喜んで!私、深山君とお付き合いしたい!」
今日、私は深山君と結ばれた。こんなにも幸せでいいのかな。
残り少しの観覧車を嚙み締めた。
学園の完璧なマドンナの裏の顔 @cucumber90960
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