第四話 FIRST DATE Ⅱ
渡良瀬が会計を済ませ次はフードコートにやってきた。夏休み期間ということもあり周りにも学生が多く席もほとんど埋まっていたが奇跡的に2人席が空いており座った。
「ふぅ…空いててよかったね」
「そうだな。夏休み舐めてた」
まだこうして話すようになってからそれ程の時間は経っていないが初めに比べて仲良くなれたのでは無いのかと感じる。まぁそれも渡良瀬のおかげなんだけど。
お互いに食べるものを決め席につき食べる。特に変わったことも無くお互い食べ終えた。
「深山君、先に戻してきて大丈夫だよ。荷物置くのも不用心だから私は待ってるよ」
俺としてもそうしようと思っていたから渡良瀬が言ったように先に返却をしに行った。なるべく早く戻ろうと早足で帰ると渡良瀬が誰かと話している。というより多分あれはナンパだ。渡良瀬を見ると苦笑いを浮かべていた。
(もしかしたら渡良瀬は男が苦手なのか…?)
クラスに居る時もほとんどは女子とだった。それだけでは苦手かどうかは分からなかったが男子と話している時渡良瀬は今のように自然な笑顔ではなくなっていた。
(でもあんなガタイいいやつ相手じゃな…)
そう。ナンパしてる男は2人。しかも大学生であろう。体格が俺とは全く違い行っても何も出来ないように感じる。正直に言おう。怖い。あいつらが帰るまで待ちたい。渡良瀬以外の知らない人なら確実にそうしていた。
「あ、あの彼女に何か用ですか?」
うわぁ…ないわぁ…最初声裏返ったし…何こいつみたいな顔してるし…
「え、何君?もしかしてこの子の彼氏?」
「いやお前無いだろ。流石に友達とかだろ。」
震えそうな手を握りこみ抑える。ここでビビったら舐められるだけだ。もう遅い気がするけど…
「んで、何?別にこの子も嫌がってなさそうだけど」
…は?何を言ってるんだこいつは…俺はこいつの発言に対して明らかに苛立ちを感じ始めた。だって渡良瀬はさっきから苦笑いしかしていない。それのどこが嫌がってないだよ
「あ、あなた達みたいな人にはなりたくないな」
今俺のできる最大の煽り。いや弱いか…?
「は?何言ってんの」
「だから女の子の気持ちも分からないような奴にはなりたくないって言ってんだよ!」
そう言い切るとさっきまでの嘘くさい笑顔を変え明らかにキレていた。…あぁ…やったなぁこれ
「お前調子乗んなよ?」
一人が近づいてきて胸倉を掴んできた。こんな展開ほんとにあるのか… ただここで引かない。完全にアドレナリンが出ていた。
「年下相手にだっせ…」
その言葉を聞いた途端握っている手が強くなった。
「調子乗んなって言ってんだよ」
「お客様どうかされましたか?」
男が俺の顔に拳に振り抜かれそうになった時巡回していた警備員の男の人が声をかけてきた。
「ちっ、行こうぜ」
胸倉を掴んでいた男は俺を突き飛ばしてもう一人とそそくさとフードコートから出ていった。警備員の方に「大丈夫ですか」と聞かれ咄嗟に「大丈夫です」と答えた。警備員は被っていた帽子を取り一礼しまた巡回に戻った。そして恐らく大丈夫ではない渡良瀬に目をやる。
「渡良瀬、大丈夫…じゃないよな。すまん」
「な、なんで深山君が謝るの!深山君は私を助けてくれたじゃん」
眉を下げ「私の方こそごめんね」と続けた。落ち込んでる…のか?
「私が誘ってせっかく来てくれたのにこんな風になっちゃって…」
渡良瀬の目を見ると涙を浮かべていた。
「渡良瀬のせいじゃないだろ。可愛いってのも大変だな」
ふと口にしていた言葉だった。そんな言葉に渡良瀬は頬に手を当てにへへと漫画なら書かれてそうな顔で笑っていた。
「深山君が可愛いって…へへっ」
「俺に言われて嬉しいもんか?色んな人に言われてるだろ?」
そうだ。渡良瀬は100人に聞いたら100人が可愛いと答える誰もが認める美少女だ。だから笑顔で「ありがと」ぐらいだと思っていた。
「言われるし嬉しいけど…やっぱ深山君に言われると特段嬉しいよ!」
「…」
沈黙。長いような一瞬のようなそんな沈黙。それを破ったのは顔を真っ赤にし手で覆っている渡良瀬だった。
「ご、ごめん…忘れて…」
自爆したのか耳まで真っ赤になってきてる。それにしてもさっきのって…自惚れてしまってもいいのだろうか。もしかしたら渡良瀬は俺の事を意識してくれてるって。ただそう思うにしてもさっきの出来事が脳裏に浮かぶ。
「いやぁ…さっきダサかったなぁ…」
そう。あのまま警備員の方が来なかったら多分一発ぶん殴られてた。しかもだいぶキツいのを。こういうのって主人公が一人でぱぱーっと解決するのが醍醐味なのに…やっぱ俺は主人公じゃ…
「そんなことないよ!」
さっきまでの恥ずかしがってた顔が今度は真剣で。でも少し赤みは残っていて。
「深山君はかっこよかったよ!」
渡良瀬はまっすぐ俺の目を見て伝えてくれる。
「私、すごく怖かった。男の人2人にしつこく声掛けられて…体格良かったし力づく連れて行かれるかもって…」
でもと渡良瀬は続ける。
「深山君は助けてくれた。深山君も怖かったはずなのに。勇気を出してくれた。確かに最終的には警備員さんが来てくれてあの人達も引いてくれた。」
真剣な、それでいて優しい眼差しで
「私の心を助けてくれたのは深山君だよ。」
その言葉で俺の心も救われていることを渡良瀬は分かっているだろうか。
「でも!あんな煽ったのはびっくりした!ほんと殴られるんじゃないかってドキドキしたんだから!」
分かりやすく頬を膨らませ怒ってる感じを出している。
「可愛いな」
「ちゃ、茶化さないで!今ほんとに怒ってるんだから!…でもありがとう…」
怒ってるなら最後まで貫けよと思ったけど喜んでる渡良瀬の表情は一番可愛いなと思い顔が緩みそうになったことをきっと渡良瀬は知らないだろう。
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