第5話
どこが好きなのか全然わからなかった。
全然喋ってくれないし、お姉ちゃんのこと私からとるし一緒にいても楽しくなさそうだし。
そうなんだ。私はそんな返事しかできなかった。
「じゃ、夕方からお祭りだけど朝から遊んでいようよ。その為に今日の分の宿題だって昨日したんだし。海人迎えに行ってくるね。」
「はぁい。」
気が重いと思った。
会いたくないなって、お祭り行きなくないなって思った。
お気に入りのバッグからプロフィール帳をとりだして「あおやま みみ」を探した。
「えっと、090…」
おばあちゃん家の電話から美海ちゃんのケータイに電話をかけた。
「あ、もしもしきらりですけど、美海ちゃんいますか?」
携帯だけど一度家の人に繋がってから美海ちゃんに繋がるらしくって、電話する時はいつもこう言ってかけてる。
「美海ちゃん、おはよ。あのさ、おばあちゃん家に来たのはいいけどさ──…。」
電話でしばらく嫌だなと思っていることを聞いてもらっていたら、お姉ちゃんが帰ってきた。
「きらり、花火は夜だけどお店はもう出てたから行ってみよ。」
「わかった。」
海人くん、お姉ちゃん、私の順番で並んで歩いた。途中で海人くんのお友達も3人来て、一緒に回ることになった。
中でも絢瀬くんは海人くんと違ってとても優しかったから、よく喋って色んな話をした。
「こっち田舎で何もないからつまんないでしょ。」
「そんな事ないよ、私初めて海とか見たよ。」
いつの間にか二人で会場を回ってた。
たぶんお姉ちゃんは他の子達と一緒。
薄暗くなってきた頃 絢瀬くんが手を繋いでくれた。
危ないからって。
「きらり、ここに座ろっか。」
「うん、疲れた。」
1つのかき氷を買って一緒に食べた。
神社の階段のところに座って話していると、向こうから海人くんがお姉ちゃんと走ってきた。
「あれ、海人。健人達は?」
走って近寄ってきた海人くんにそう聞いた絢瀬くんは、
「痛っーーー!な、何すんだよ…。」
海人くんにいきなり殴られた。
その場に蹲って痛がっていて、一緒に食べていたかき氷は足元に転がった。
「だ、だいじょ…うぶ?」
お姉ちゃんが絢瀬くんに近寄って、血が出ている口元をハンカチで抑えている。
「え、な、何っ。」
怖くて震えた。
海人くんに急に腕を掴まれて、無理矢理その場を連れ出された。
立ち上がった時に、転がったかき氷のカップがグシャッと音を立てて潰された。
「え、え、絢瀬くんとお姉ちゃん…が…っ、」
そんな事はお構い無しといった感じで、ひたすら歩かされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます