03. ふたりで恋を犯しましょう

第36話

「おはようございます」



よく晴れた秋のある早朝。


私は都内の撮影スタジオにいた。



「おはようございます」「よろしくお願いします」と挨拶を返され、近くにいたスタッフさんに控室へと案内される。


周囲ではバタバタと大勢の人が行き交い、これから始まる撮影の準備に忙しそう。




┊͙

┊͙

┊͙




今日は来秋公開予定の、私、山崎くるみが主演を務める映画のクランクイン。



ドラマ出演はアイドルデビューしてすぐの頃に一度あるけれど、映画撮影は中学生の時以来、実に4年ぶり。


アイドル活動を始めてからは外部仕事は抑えめにしてもらっていたし、前回までとは違い私はもう子役ではない。



どんな撮影だろうと緊張を見せたことも、気負いすぎたこともないけれど、今回ばかりはそれなりの緊張感がある。


周りの視線も、私自身の心持ちもまるで違う。



―――期待、されている。



子役を脱した "山崎くるみ" のこれからに。



ひしひしと肌で感じる。

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