第34話

「俺は、おまえの隣に立つ。誰も文句言えないくらい相応しいありさまで」



覚悟を湛えた瞳が、強い輝きを放つ。



あぁ、この瞳がもう一度見たかったんだ。


あの日見た、この強い瞳を。



「すぐに昇りつめるから待ってろよ」


「待っててなんてあげない」



相変わらず不遜だけど、私も夏瑪くんに負けず劣らず不遜に返す。



「だから早く追いついてよ」



視線が対峙する。



私はどくどくと、体中の血液が沸騰しているような感覚に襲われる。



夏瑪くんは、もっともっと高みに行ける。


私なんかへの執着で、その可能性をみすみす潰していいわけがない。



「そろそろ行かなきゃ」



澤田さんが手配してくれた送迎車が待っているはず、と出入口に向かいかけた腕をぐい、と引かれる。

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