第30話

「ナツメの才能は確かだけど、キヨだって、アラタだって、辞めた佐保だって、Greatidiotにはなくてはならない。中途半端はナシだよ」



抜かりなく釘を刺す辺りは、さすがリーダーであり、やっぱり兄でもある。


そして夏瑪くんの、みんなの才能に一番惚れ込んでいるのは、秋芭くんなんだよね。



私たちは常に世間の目に晒されているぶん、世間を納得させるだけの行動と結果を示さなくちゃならない。



欲しいものを欲しいと声にするのを許されるのは、いつだって成功者だけ。




「チッ」



バタン、と荒々しくドアが閉まる。


まるでお説教をされて不貞腐れた子供みたいな態度で、舌打ちをひとつ残して夏瑪くんは部屋を出ていった。



「子供だねぇ」



苦笑いで顔ごと視線を伏せたキヨさんは、きっとたくさんのものを犠牲にしてここに立っているのだろう。


まるで夏瑪くんとは正反対で、そんな夏瑪くんが羨ましくもあり、心配しているのだってことは私にも分かる。



「悪いね、うちの愚弟が」



こうやって秋芭くんが最後には尻拭いをして、後始末をしているのね。


きっとこのお兄さんたちはみんな、なんだかんだ末っ子がかわいくて仕方ないんだわ。

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