第28話

「ま、俺らの才能っていうか、ナツメの才能だけどな」



キヨさんの言葉に呼応するように手元で震えたスマホを開くと、目の前の男からの不愉快極まりないメッセージがロック画面に浮かんでいる。



【何キヨに褒められてチョーシのってんの?】



こいつ……。



キヨさん、こんな傲慢で不遜なやつのフォローなんてしなくて大丈夫です。


とは言えないので、引きつりそうな笑顔をなんとかキープしてスマホを裏返した。



【おい】


【胡桃】


【無視すんな】


【あとで覚えとけよ】



短い間隔で振動を続けるスマホは無視して向き直る。



「くるみん、ソレ鳴ってるけど大丈夫?」


「大丈夫です。迷惑メールです」


「それならいいけど。仕事の連絡かなと思ったから」



迷惑メール扱いされた夏瑪くんの眼光が鋭くなったけれど、威嚇したら人が簡単に思い通りになるとは思わないでほしい。



キヨさんたちも分かっていて触れないでくれているのは、救いでもあり、居た堪れない気持ちでもある。

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