第27話

「胡桃」



苛立ちを含んだ声が小さく名前を呼ぶけれど、それは無視して談笑を続ける。



「くるみん、制服だね。いいなぁ、懐かし」


「私だってあと半年したら制服脱ぐんですよ?」


「えー、脱ぐって。なんかやらしいね」



できる限り学校へは通うようにしているから、今日の私も学校帰りにそのまま事務所に来ている。



「おい、胡桃」



不機嫌さを隠しもしない声は、先ほどよりも色濃く苛立ちを伝えてくる。


全く、夏瑪くんに何の権利があって私がそんな態度を取られなきゃいけないのよ。



わざわざ真正面から受け止めて、ただの社交辞令にまで牽制しようとするから困る。



怪しまれるからそんなで睨みつけるの、ヤメテ。



「キヨさんたちだって充分お若いですよ。そのお歳でしっかり才能を評価されているところ、嫉妬します」


「くるみんは正直ではっきりもの言うところがまたいいよね」



ははは、と軽い笑い声を零したキヨさんこそ、嫌味も棘も感じさせずに鋭いところを突いてくる。


プロに認められた気がする。

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