第23話

「時間あったら、くるみが撮影入る前にどこかでお茶でもしようよ」


「いいよ。またスケジュール送るね」



清佳の提案にぱ、と心が晴れやかになる。



お茶とかいつぶりだろう。


ここ最近ずっと重苦しかった胸のわだかまりが、すーっと溶けていく気分。



知らず知らずのうちに、私、振り回されていたんだな。


自分の軸を持って、自分の足で立たなきゃ。



じゃなきゃ、簡単に折れてしまう。



「くるみの誕生日祝いだよ」


「ほんと?嬉しい」


「くるみの好きそうなとこ、いくつか送るから選んでよ」


「え、いいの?」


「その代わり、気分転換して、ちゃんと切り替えて撮影に臨みなよ?」



ほんと、清佳には頭が上がらない。



「ありがと。清佳、大好き」


「はいはい」



レッスン前の自主練に向かう清佳に手を振り、再びイヤホンを耳に差し込む。



遮断された世界に、甘い歌声が支配する。

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