第18話

そこには控室でのふざけた態度も、さっきまでの自分勝手さもなくて、ただただ静かな声だけがまっすぐ届く。



「……な、ん、……そんなの、」


「撮られるようなヘマ、するつもりもないし」



どくん、どくん、と。


急に真面目なトーンで繰り出される言葉たちに、痛いほどに鼓動が大きくなる。



「言ったじゃん、俺。胡桃の隣に立つって」



それはミュージシャンとして、でしょう?



含みを持たせて、言及を避ける言葉のひとつひとつが、鎌首をもたげて私を狙っている。


やり過ごすのが精一杯。



「……そ、れに、この包み何?夏瑪くんでしょう?」



ブランドショップのロゴが描かれた紙袋。


こんなものが、キャリーの中に入っているはずがないのだ。



こんなあからさまなプレゼント、受け取れない。



「それはせめてものお詫び」



ふ、と空気が和らぐ気配がして、予想もしていなかった言葉が耳に届く。

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