第14話

窓ガラス1枚隔てた都会の騒めきの中、スマホを開く。


移動時間を利用してブログを書いてしまおうと、今日を振り返ってアプリに文字に落とし込んでいく。


カメラロールの中からいくつか写真を選んで、下書きに

保存する。



「澤田さん、ブログ保存したのであとでチェックお願いします」


「了解」



そのやりとりを境に、車内には沈黙が落ちる。



流れゆく夜の街の明かりをなんとはなしに眺める。


この辺り、最後に歩いたのはいつ頃だっけ?


行き交う人も、今は風景の一部でしかない。



「山崎、本当に分かってる?」



しばらく車内に流れていた沈黙は、澤田さんの唐突な問いかけで途切れた。


バックミラー越しにその表情を窺おうと顔を上げたけれど、運転する彼女の顔は前を見据えたまま真剣だった。



「分かってますよ」



何が、とは言わない念押しに、私も何が、とは言及せずに答える。

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