第13話

「お疲れさまです」



キャリーバッグを引きずって会場の裏口から出たところに、1台のワンボックスが待機している。



「お疲れ、山崎。これ、さっき言ってたケーキとお菓子ね」


「わぁ、ありがとうございます」



挨拶をして乗り込むと、運転席に座る澤田さんから助手席に置いてあった紙袋を渡される。



「今日はもう食べちゃダメよ」


「はぁーい、分かってます」



イベントに登場したバースデーケーキは有名店のオーダーメイド。


カラフルなフルーツたっぷりの映えケーキ。


せっかく美味しそうなのに、まだ一口も口にできていない。



それを読まれたのか、しっかり釘を刺されたところで車が走り出す。


自宅マンションまでは、マネージャーの澤田さん自らが送迎をしてくれる。



タレントに手厚くもあるけれど、厳しくもあるのが私の所属する事務所。



ケーキは明日、朝食代わりにいただくことにしよう。

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