第12話

「山崎、30分後に車回すから。それまでに準備しといて」


「はい」



着替えとクレンジングを手早く済ませて、スタッフさんたちがせっかく用意してくれたケータリングで軽めの食事を摂る。



公演前はスープくらいしか口にできなくて、ゆっくり味わう暇もなかった。


バタバタの1日を終えて、ようやく一息吐く。



控室を覗いたマネージャーの澤田さんに返事をして、新曲のリハ動画を一旦止めて食べることに集中する。



「ナツメくんから差し入れいただいたから、また会ったらお礼言っといてね」



澤田さんの言葉にさっきの出来事が脳裏に蘇って、せっかく美味しさに満たされた気持ちがほろほろと崩れていく。



「山崎?」


「……分かりました」


「バースデーケーキとケータリングに置いてたお菓子と一緒にしておいたから。残りはスタッフで分けたからね。帰りに持たせるわ」


「ありがとうございます」



今日夏瑪くんがイベントをしていた場所を考えると、何を買ってきたかなんて簡単に予想がつく。


私のお気に入りの抹茶カフェのスイーツなんかで絆されたりしないんだから。

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