第6話
大人しくされるがままの私に満足したのか、ふ、と気まぐれに拘束が解かれる。
その開放感が心許ないのは、きっと気のせい。
「
再び距離を詰められないよう、視線で制して身構える。
ようやく私の口から音が零れた時、私はただこの男の名前を呼びたかったのかもしれない、とそう思った。
男―――夏瑪くんは私の質問に答えることなく、ゆったりと緩慢な動作で見せつけるように、さっきまで私の唇に触れていた指先を、自身のそれに押しつける。
こんなとこで色気の無駄遣い、しなくていいわよ。
「はぁ……」と、ひとつ溜息が零れる。
「今日、新曲の発売記念イベントでしょ?そのあと取材じゃなかった?」
「あれ、俺のスケジュール詳しいね?マネージャーだっけ?」
よく言うわ。
聞いてもいないのに、事務所で鉢合わせた時にぺらぺら喋ってきたのはそっちじゃない。
「取材は20時から。イベント終わってソッコー会いにきてやったんじゃん」
会 い に き て や っ た ?
頭おかしいんじゃないの、こいつ。
甘いルックスと歌声で、元来の男性ファンのみならず女性ファンからの人気も急上昇、今絶賛売り出し中のバンドのフロントがこんなプロ意識、ゴミ野郎なんて。
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