第4話

┊͙

┊͙

┊͙




「お疲れさまです」


「お疲れ、良かったよ」


「ありがとうございます」



無事にバースデーイベントも全公演終了し、私は安堵の気持ちとともにバックヤードを歩く。


歌やダンスの先生、スタッフさんたちと簡単に挨拶を交わして、今はとにかく汗で肌に張りつく衣装を脱ぎ捨て開放感に浸りたい、と控室へと一直線に向かう。



慌ただしく行き交う人々を尻目に、公演前はゆっくり味わえなかったケータリングに「あとで食べよう」とお気に入りを見つけて。


1人で使うには広すぎる部屋のドアを開けた。



―――その時だ。



「ッ!」



ぐい、と引かれた腕に、音もなく扉の死角の壁に縫いつけられる。



「しぃー!」



よく見知った男が、世の女性たちを虜にするその唇に指を立て、国宝級の顔面に楽しそうに愉悦を浮かべる。


まるで悪魔の微笑みだ。



視界の片隅で、ゆっくりとドアが閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る