第3話

「ありがとうございます」



歓声が落ち着いた頃合いで、私は再びマイクに声を乗せていく。



「思い返せば15歳でアイドルとしてデビューして、このステージでデビュー記念イベントをさせていただいてから、コンサートでもそうですし、毎年バースデーイベントを開催するたびに、毎回この場所に立たせていただいてきました」



アイドルとしてデビューして3年目。


ありがたいことに毎年、この聖地に立たせてもらっている。



ここは私にとっても、ファンの方たちにとっても、とても大切な場所。



3部制の最後の公演に当たる今、着ている白いミニドレスは、1年目に着た思い入れのある衣装に1年ごとにアレンジを加えて着てきた、3年分の重みがある。



「16歳、17歳、そして3回目の18歳。誕生日当日にこうしてたくさんのファンのみなさんにお祝いしていただけて、私は、ほっんとうに、幸せ者だな、って……、」



思わず感極まって言葉に詰まると、背中を押すように客席から声が上がる。



「頑張れー!」



温かい声援に応えるべく、しっかりと客席を見据える。



「……ありがとうございます。本当に今、この瞬間が幸せです。応援してくださるみなさんがいて、山崎くるみは在り続けられます。今日は本当に、ほんとーうに、ありがとうございました!山崎くるみでした!」

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