第9話

自宅に戻ると、真っ先に浴室に向かう。



洗面台の鏡に映るのは、進学校と呼ばれる高校の制服を身につけた少女。


先ほどの情事の名残りなど感じさせない、きちんと整えられた制服姿は優等生然としている。


艶のある黒髪も、化粧っけのない顔も、至極学生らしい。



そんな仮面を被っている自分の汚さに、にわかに腹立たしさが募って剥ぐように制服を脱ぎ捨てた。



燻った気持ちを打ち消すように頭から熱いお湯を浴びる。


排水溝へと吸い込まれていく泡を見つめながら、汚れた私の心の破片がぽろぽろと流されていくような錯覚に陥った。



最低なことをしている、と自覚はあった。


けれどもう、引き返すことはできなかった。



キュ、とシャワーのコックを捻る。



髪の先からぽたぽたと滴り落ちる雫が、まるで涙が零れ落ちるようで。


皮肉だ、と思った。


感情に振り回されるような、そんなカワイイ性格じゃないのに。

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