第6話

ここは私たちの住む市の隣の市の外れにある公立高校。


進学校を謳ったこの高校は、勉学のみならず部活動も盛んで、文武両道が特色の学校。



駅から少し歩くものの、私の街から電車で1本と比較的通いやすい。


けれど駅周辺があまり栄えておらず、学校帰りに遊べるような施設も少ないこの高校に、私たちの中学からは進学する子はほとんどいない。


大抵の子は地元の高校か、反対の都会方面の高校を選ぶ。



だから、今年の進学者は私とあい子のふたりだけ。



心細くはあったけれどあい子と一緒だから、知り合いもいない、全くの新しい世界に飛び込むのに、私には少しの抵抗もなかった。


むしろ狭く冷たい世界から、ようやく開放された気分でいっぱいだった。



中学の時は最悪だったから……。



楽しい思い出もあった。


友達だっていた。



だけど、それは……、一瞬の出来事であっけなく私の手を擦り抜けて、そして、壊れていった。



それから逃げるように、私はこの高校に進学を決めたのだ。


あい子だけが唯一、私の味方でいてくれた。

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