第5話
「さくら!」
体育館から移動する列の途中、私のすぐ前を歩くあい子がこっそりと後ろを振り返る。
「よかったね、同じクラスで」
あい子の言葉に小さく頷いた私は、そこで初めて安心した感覚に体を包まれ軽く笑みを零した。
「今日からうちらも高校生か。楽しい高校生活になるといいね」
そう話すのは
私、
内気で人見知りな私と違って、明るく頼りがいのあるあい子はショートカットがよく似合う美人。
誰にも媚びることがなくて、だけど、誰に対しても誠実で。
こんな私を見捨てないで、ずっとそばにいてくれる。
甘えているんじゃないか……。
その優しさにそう思うこともあったけれど、あい子はずっと私の友達でいてくれた。
「高校生、か……」
ぽつり、と私の独白はそっと春の緩やかな風に溶けて消えた。
……ほんと、楽しい高校生活になるといいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます