第2話 空から登場!?謎のお姫様!!

「なんで空から人が!?ってどうすれば助けられるのコレ!!?」


一生に一度たりとも体験できないであろう現実に、つむぎは慌てふためきながら解決方法を模索する。

流石に、目の前で人がグチャッと逝く姿は見たくも無ければ想像もしたくないというその一心で。


「何か柔らかいもの……ってそんなの今から持ってくるのは無理だし――……えーっと何か衝撃を緩和できる方法緩和できる方法――――!!!」


辺りを見渡しても、この状況を解決できそうな代物も無ければ思い浮かぶ案も無い。

正に絶体絶命――――相手が。


「神様っ、お助けくださいっ~~~!!」


手を祈りの構えにし、届くように空から落ちてくる少女は声を上げた――――その時だった。

急に少女の体が淡くほとばしる黄色の光に包まれたかと思いきや、その体はゆっくりと――まるでワイヤーに吊られているかのような挙動をしたのは。


「あ、……え?」


――そして、何の衝撃も受けずに地面へと無事着陸を果たしたのだ。

正に、これを魔法と言わずしてなんというといった現実

そんなあり得ない光景を見て、つむぎは一言。


「す…………すっごおおおおおおおい!!」


目を輝かせて、興奮気味に告げる。

そして、金髪の少女に向かって行くと――興奮冷めやらぬまま口を開き始める。


「ねえねえ!!今のどうやったの!?なんか光が出て包んでたけど!!!」


腕をぶんぶんと上下に振り上げては降ろしながら、つむぎは問いかける。

そんな彼女に、金髪の少女は困惑気味な様子を見せた。


「あ、ごめんね急に。私の名前は綻枇つむぎって言うの!!あなたは?」

「綻枇つむぎ……?王国には居ない珍しい名前――……という事はつまり、私は無事未来へ行けたのね」


つむぎの言葉に構わず、少女はぼそぼそと独り言を呟く。

神の力を信頼している彼女にとって、この時代が今何年なのかだとかはわざわざ確認しないのだ。


そして、場を切り替えるように咳払いをすると――つむぎに目線を合わせ、スカートの裾を持ち上げながら上品に口を開き始める。


「私の名前はゼスカ・アドバーシティと申します。ゼスカとお呼びください」


ザ・お嬢様といった華やかな服装に、この言葉遣い。

それらにより、つむぎのギアが上がる。


「す、すごい……!!えっと、ゼスカさんはもしかして、お嬢様だったりするの……ですか!?」

「お嬢様…………はい、そうですよ。ですが、今は違うんです」

「いまはちがう?」


その言葉に、つむぎの頭にはてなが浮かぶ。


「私は元々、マリニアス王国と呼ばれた国の姫でした。けれど――この時代の風景を見る限りでは、その面影を一切感じません」

「まりにあすおうこく?おうと?」


アニメや漫画などでしか聞いた事の無いワードだらけを発す少女に、また更につむぎの頭に浮かぶはてなが増える。


「……って、こんな所で足踏みしている場合ではありませんでした!!」


すると少女は、思い出したかのように大事に抱えていた箱をみのりに向かって差し出した。


「お会いしたばかりで申し訳ないのですが、お願いがあるんです。この箱を開けてみてくださりませんか?」


それは、神々が未来へと託した希望。

これを開け放つ者を探すのが、彼女の使命でありそれを遂行するのだ。


「え?別にいいですけど……鍵は持っていますか?」


まるで海賊が残したお宝箱のように、ご丁寧に鍵穴がついている箱であった為、つむぎはゼスカが鍵を持っているか否かを問いかける。


「鍵…………?」


ゼスカは箱をまじまじと見つめ、その仕組みを理解する。


「確かに。よくよく見るとこの箱、鍵穴がついていますね……」

「持ち主なのに知らなかったんですか?!」


先程までの立ち居振る舞いからは真逆の抜けた要素を唐突に見せられたつむぎは、思わずそうツッコミを入れる。


「……いえ、でも――」


神に限って鍵を渡さないというミスは有り得ない――そう思い立ったゼスカは、ここに来るまでの記憶を辿り神々との会話を思い出す。

そうして、数分とかけて――――一つの会話を思い出した。


『そして、ゼスカ殿。貴方が未来へと渡り、我々が閉じ込めた強さ――その“どれかに共鳴”し、この箱を開け放つ者を4人見つけ、魔王を打ち倒すのだ』


それは、ナハルトがゼスカへ向けて言い放った使命の言葉。

その中に、この箱を開け放つ為の“鍵”について説明されていたのだ。


「この箱の中身に共鳴する人間……それが、この箱を開け放つ為の鍵そのものなんだわ!!」

「はこのなかみ?きょうめい?」


置いてけぼりにされているような感覚を味わいながら、彼女の言葉を所々復唱するつむぎ。

先程から、ゼスカが言い放つ言葉は彼女の理解力の範疇を超えているものばかりである。


「えぇそうです!!この箱に物理的な鍵は無いんです!!恐らく、神々が込めた強さに共鳴した人間にしか開けられない――そういう事なんです!!」


自らの力で答えを導き出したからか、テンションが上がっているゼスカ。

そんな彼女に、つむぎは頭にはてなを浮かべたまま告げる。


「えっと…………よく分からないですけど、とりあえずこの箱を開けられる人を見つけたいんですよね?でしたら私、探すの手伝いますよ!!」


時刻は15時を過ぎた辺り。

であれば、みのりにはまだまだ時間はある。


「本当ですか?!それはとても助かります!」


薔薇でも背景に見えてきそうな華々しい笑顔を向けながら感謝を述べるゼスカ。

そんな彼女の笑顔を受けて、つむぎはより一層やる気を出す。


「そんな顔を向けられたらやる気が溢れてきちゃいますよ!!よーっし、探すぞー!!」

「感謝します!!」

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