第4話 変貌

 息子が急に色づき出した。まるで色男みたいにメイド達に花を送ったり、甘い言葉を投げかけたりしていた。


「十年後、絶対に良い男になるわ!」


 メイド達の間でそういう話がひっきりなしに飛び交うようになった。私の不安は募るばかりだった。お風呂やパーティの時も感じていた違和感がより一層強くなっていた。


 私に対しても「お母様、いつもありがとうございます」と母親に向けての愛情表現を示してきたが、どうも裏に何かあるのではないかと勘繰かんぐってしまう。


 最近、本当に息子の事で気を揉んでいるからか、寝ても全然疲れが取れなかった。夫も私の事を気に掛けて、叔母が代わりに息子の面倒をみさせていた。


 内心不安だったが、息子に会わなくて済むので、いくらか肩の荷が降りた。


 しかし、ある日、息子の部屋から甘い声が聞こえてきた。一体何をしているのだろうと思って少し戸を開けて覗き込んでみた瞬間、開いた口が塞がらなかった。


 叔母と息子が裸で密着していた。いや、もう完全に性交渉をしていた。叔母は赤らんだ顔で息子のテクニカルな腰使いに悶絶していた。


 私は幻を見ているのかと思った。一体何がどうなって、そういう関係になったんだ。いや、それ以前に息子がいつ性知識なんか身につけたんだ。事故の前に赤ちゃんはどこからくるのと聞かれた際、『妖精達に運ばれてきたんだよ〜!』と言っても信じていたのに。


 私と夫がこっそりしているのを目撃した? いや、それにしては巧みすぎる。知識と経験は叔母の方があって教えてあげているならまだ(よくはないけど)いいが、あれは息子が完全に主導権を握っていた。


 これでもう確信に近くなった。うちの息子は明らかにおかしい。息子の中に何か悪いことが起きている。


 もしこのまま放っておいたら、メイド達にも息子の魔の手がくわわるかもしれない。そして、私にも――。


(なんとかしないと)


 私は彼らに気づかれないように慎重に戸を閉めて、図書室へと向かった。

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