第43話 薬師、股間がヒュンとなる ※一部父視点
オークの金〇を採取……いや、オークを討伐するために逃げるオークを狩っていく。
背中を見せているオークを倒していくのは簡単だ。
まさか俺が戦いに参加すると思うか?
オークを狩っているのは若手騎士達だ。
俺はそんな若手騎士達を安全なところで眺めている。
「うひょおおおおお!」
「メディスン様、ほら金〇ですよ!」
若手騎士達が嬉しそうにオークの睾丸を俺に見せつけてくる。
その光景を見て、俺の金〇はヒュンとどこかへ逃げて行こうとする。
男ならこの気持ちがわかるだろう。
町の中のオークを倒していると、町の外でも未だに戦っている音が聞こえている。
冒険者達はオークの討伐に手こずっているのだろう。
「ここは俺の出番ってことだな」
町の中のオークを借り尽くした俺は若手騎士達を集める。
「お前らいいか!」
「「「「「イエッサアアァァァ!」」」」」
「あっ、とりあえず金〇は地面に置いておけ」
お互いに顔を見合わせて、地面にオークの睾丸を置く。
騎士達は命令を受ける時に手を胸の前に起き、姿勢を正す。
ただ、オークの睾丸を持っていたため、どうすれば良いのかわからなかったのだろう。
「くくく……」
あのまま姿勢を正していたら、ちょうど胸の辺りに睾丸……笑いそうになるのを必死に耐える。
「ごほん! 今から外にいるオークを討伐する」
「「「「イエス、金〇!」」」」
そこは〝イエス、メディスン〟とかでかっこよくキメるはずが、本当に俺が睾丸のようになっている。
「うん、その掛け声はやめてくれ」
「「「「イエッサアアァァァ!」」」」
そして、この軍人みたいな返事もやめてほしいものだ。
「今から外で戦っている冒険者達の援護に回る。戦いの隙を狙って回復タブレットを冒険者に渡してくれ」
「「「「イエッサアアァァァ!」」」」
戦いが長引けば長引くほど、回復タブレットの数が足りなくなっているだろう。
あれだけ町の中にオークが入ってきていたら、考えなくても戦場の状態が理解できる。
俺は追加で若手騎士達に回復タブレットを支給する。
「おい、そこ! ポケットに入れて持ち帰ろうとしない!」
「イエッ……ノオオオオオオ!」
否定されたのは初めてのような気がする。
そこまでして回復タブレットが欲しいのだろうか。
「追加で欲しいなら、帰ってきたらいくらでもやる!」
「「「「イエッサアアァァァ!」」」」
あれ……。
一人に言ったつもりがみんなが返事をしていた。
「ふふふ、これでメディスン様を近くに感じることができる」
隣にいるクレイディーは回復タブレットで良からぬことを考えているようだ。
ひょっとしたら若手騎士達もお守りのように感じているのだろう。
「お前達、全員で帰ってくるぞ!」
「「「「イエッサアアァァァ!」」」」
俺はなぜ冒険者達がオークの上位種を未だに倒せていないのか、外に行くまでに考えるべきだった。
♢
「そろそろ町に帰る準備をするぞ」
荷物をまとめて町に向かっていく。
ここ数日、セリオスと行動を共にしたが、次期ルミナス公爵家の跡取りとして、文句一つないほど強かった。
文句があるとしたら……。
「やっぱりメディスンはすごいな。ははは、これがあればいくらでも戦えるな」
息子お手製の回復薬を食べて、嬉しそうに微笑んでいることだ。
絶対あいつが町に戻ったら、メディスンを嫁にくれと言い出しそうな勢いだぞ。
何度もゴブリンの群れに一人で行かせるが、嬉しそうに回復薬を食べながら帰ってくる。
まるで戦うことが好きな戦闘狂のようだ。
「今年はオークが少ないので、睾丸が集まらなかったですね」
今回の討伐ではゴブリン種やコボルト種に会うことが多かった。
オークの睾丸は錬金術師に高値で売れるため、領地が潤う資金源だったがいないのであれば仕方ない。
――カーン!カーン!カーン!カーン!
鳥たちは飛び立ち、異変はすぐに知らされた。
町の方から高い鐘の音が聞こえてくる。
遠くにいてもその音は聞こえてくるほどだ。
「お前ら今すぐに町に戻るぞ!」
町に馬を走らせる。
この距離であれば夜中には町に着くだろう。
「ルクシード辺境伯様、そんなに急がれてどうしたんですか?」
今年はただ単にオーク種が少ないだけかと思っていた。
森に入ってから数日経ったが、違和感にすぐ気づくべきだったのだろう。
「町に異変が起きてる。あれは魔物を知らせる鐘の音だ」
「なんだと!?」
「町が危ないぞ!」
どうにか子ども達だけでも無事なのを祈る。
隣でセリオスが俺を超える勢いで町に戻っていく。
「俺のメディスンが……回復薬が……」
小さな声でメディスンを心配する答えが聞こえてきた。
やはりあいつはメディスンを嫁にする気だな!
「わしの息子はそう簡単にはやらないぞおおおおおお!」
町までわしとセリオスは馬に乗りながら、知らないうちに先を争っていた。
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