第37話 天才球児、ショウヘイ
「紹介しましょう。これが我がチームの
ショウヘイさんだ!」
背丈は170cmほど、黒い髪に透き通る肌。一見するとどこにでもいる運動少年ですが、一同が目を見張ったのは彼のステータスです。
●レベル:20
●体力:100
●魔力:0
●筋力:100
●防御力:80
●多才力:70
●速力:85
●魅力:50
●コアスキル:スイーパー
体力と筋力が100。デネキスやザンテツを上回っています。
>天才球児のショウヘイじゃん!
>テレビで特集されてるの見たことある!
>マジか、激アツすぎるw
一部の野球ファンはコメント欄で盛り上がりました。
グラウンドの土を踏み締めたショウヘイは帽子をとると、人間側にお辞儀しました。
「シン・トウキョウ第一高校一年のショウヘイです。今日はよろしくお願いします」
顔を上げた彼は人間側の顔を一人ずつ見つめました。互いの視線を合わせるように。そこに相手を値踏みする意図などなく、これから素晴らしい試合を行いたい、という誠実さが伝わってきました。
ショウヘイが最後に見たのはロナータでした。ロナータの顔をまじまじと見つめると、野球少年はパァと笑みを浮かべました。
「もしかして、もしかしなくても、ロナータさんですよね!」
早足で近づいてくると、グイと顔を近づけます。
「そ、そうだけど……」ロナータは腰を反らしながら言いました。
「うわぁ、本物だ! 僕、ロナータさんの初期からのファンなんです!
「そうなの」
「今日はよろしくお願いします!」
ショウヘイはロナータの手を取り、力強く握手しました。
***
人間チーム、作戦会議。
「この中で、野球をした奴はいるか?」
監督を買って出たザンテツが問いかけるも、手を挙げる者はいません。
>うわ、絶望的w
>負けゲー草
>風呂入ってこようか?
悲観的なコメントが流れる中、デネキスは胸を張ります。
「やったことはないが、見たことはあるぞ。要はバットを振ってボールに当て、ベースを踏めばいいのだろう?」
「お前はできるかもしれないが、他の四人ができるとは限らないだろう」
頭をかいたザンテツは神さまを見ました。
「神さまは野球やったことあるのか?」
「やったことはないが、問題ない。吾は神だからな」
通常運転の答えにザンテツは「そりゃそうだ」と眉を顰めました。
一方の悪魔陣営ではサタンがボードを使って細かく指示を出しています。
それを見たザンテツは不安を覚えずにはいられませんでした。
***
プレーボール!
各チームの構成はこちらのようになっています。(球審は各チームの持ち回り制。基本的に次のバッターが行う)
人間チーム(ポジション)
一、カゲマル(一)
二、デネキス(三)
三、ザンテツ(投)
四、神さま(遊)
五、ロナータ(捕)
六、ジャスミン(二)
悪魔チーム(ポジション)
一、サタン(捕)
二、バズ=ジャック(一)
三、アカツキ(二)
四、ショウヘイ(投)
五、マダム(遊)
六、ズッコ(三)
試合開始早々、ザンテツの悪い予感が的中します。
先攻、悪魔チーム。
一番のダーク・デーモン=サタンは、全体で二番目に高い筋力を活かしてザンテツの速球を上手くライト前に運びました。
このことはザンテツも計算済みでした。筋力で自分を上回るのはサタンとショウヘイのみ。この二人にヒットを許したとしても、後の四人を抑えれば得点は最小限に済む、と。
しかし、二番ファーストのバズ=ジャックが思わぬ手を使ってきます。
バントです。
これはザンテツも予想していませんでした。何とかバズ=ジャックをアウトにしたものの、サタンは得点圏となる二塁へ。本格的な野球の戦術を使ってきたことに驚きを隠すことができませんでした。
「見たか!」
ズッコが声を張り上げます。
「父ちゃんは、この日のために二徹して石橋○明のラジオのアーカイブを全部聞いたんだぞ!」
次のアカツキは動揺に送球が狂い、ファーボール。
そして、ショウヘイ。
目を輝かせた野球青年は、バットをホームベースに置いて自分の立ち位置を確認すると、侍が刀を振りかざすかの如く構えました。
ザンテツは自分の心拍数が上昇していることに気づきました。これは、初めてジェネラル・デーモン=リリンと対峙した時のようでした。
(落ち着け、ザンテツ。天才球児だからといって所詮はただの子供だ。内角ギリギリのストレートでビビらせてやれば……)
しかし、パラメータ100は世界を変える。
ショウヘイが切り上げるように振り抜いたバットは周囲の空間を捻じ曲げ、真空を生み出す。真空は自身の虚無を埋めようと周囲の空気を吸収し、ボールの軌道をも変える。軌道が変わったボールはなすすべなくバッドのミートポジションへ————
全員が打球の行く末を追います。
高く上がったボールは、そのままスタンドへ!
——ホームラン!!
人間チーム:悪魔チーム=0:3
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます