第33話 対決23区、甘いもの編

「23区甘いもの早食い競争?」

「そうだ。シン・トウキョウに23ある行政区の各名産物を美味しく早くいただくというものだ。名付けて、




   対決23区、甘いもの編!」




 これは大きく出たな、とロナータは思いました。


 しかし、これであればロナータにも勝つ可能性があります。相手は天使。規格外の生き物ですが、が彼にはありました。


「よし、受けてたとう!」


 ロナータは力強く言いました。


「ときにミカエルよ」


 ひと段落したところで神さまが口を開きます。


「この作品は一話あたり4000文字程度を見込んでいるのだが、23区も回る時間などあるのか?」

「知りません、そんなこと! 作者にでも聞いてください」


 ミカエルはバッサリ言い捨てました。

 えぇ〜、まじか……。




   ***




 さて、〈締め切り〉に追われている作者は置いといて、いよいよ対決23区が始まります。


 ルールは簡単。23区の甘いものをそれぞれ早食いしてもらいます。早食い競争に勝った者はその地区の面積がポイントとして加算され、合計点数が最も高い人物が最終的な勝者となります。


 すなわち、小さい面積の地区では休んで、大きい面積の地区では本気を出す、といった作戦を立てることができるのです。


 そして、戦況は最初からクライマックスとでもいうべき展開からスタートします。


 舞台はシン・トウキョウで一番面積が大きい地区、

 オオタ区です。


 四人はミカエルの側近、ラファエルの魔法で舞台となる老舗和菓子店に移動しました。ラファエルの瞬間移動魔法を用いれば、一日(もとい一話)でシン・トウキョウを一周することができます。


 さて、肝心の対決種目は————




「モノホンの大福」。




「何だ、『モノホンの大福』とは、ふざけとるのか」ミカエルが悪態を吐きます。

「いいえ、ミカエルさま。しょくログではオオタ区の有名和菓子はここの『モノホンの大福』だと書かれています」


 ラファエルの言葉にミカエルは「ネットの情報なら仕方ない」と、情報弱者のようなことを漏らしました。


 さあ、いよいよ対決です。


 公園の一角のベンチを借りて二人は対決することになりました。まるで中学生が遊戯王をやっているみたいです。


 ベンチの上に拳大の大福を置き、睨み合う二人。


「よーい、はじめ!」




 ラファエルが合図を出した瞬間、勝敗は決しました。




 なんと、ロナータが拳大の大福を口をあんぐりと開けて丸呑みしたのです!

 これには大天使ミカエルも開いた口が塞がりませんでした。


(まさか……!!)


 ミカエルはロナータのことをスズムシだと侮っていました。早食いできるほどの器はない、と。一方で自分はそこそこ食える方でした。バイキングで全料理を制覇したこともあります。勝負は火を見るよりも明らか。圧勝で終わるだろうと思っていました。


 ですが、現実は口元に白い粉をつけて睨みつけるロナータ。一口しか欠けていない大福を持ったミカエル。


 ミカエルは意識せざるを得ませんでした。

 この勝負、油断したら負ける!!




   ***




 初戦を制したロナータにはオオタ区の面積71.7平方キロメートルが、そのまま得点として加算されます。これはシン・トウキョウ全体の約10分の1に相当します。


 勢いそのままに、ロナータは次のタイトウ区対決(フルーツサンド)も勝利します。これで83.6対0。


 後がなくなったミカエルは次のナカノ区対決、パンプキンパイのアイスクリームトッピングに対して、ナイフやフォークなど使わず手づかみで食べ始めました。天使としての品位などお構いなしに勝利を掴み取ろうとする意志の強さに三人は目を見張ります。ナカノ区はミカエルが勝利して83.6対18.5。尚もロナータがリードしています。


(そこまでの覚悟があるなら、ボクだって)


 次のキタ区対決。出されたキウイフルーツとアールグレイアイスクリームのパフェを、インスタ映えする見た目など顧みずロナータはスプーンで混ぜ、飲むようにして平らげました。そのまま彼は次のシブヤ区対決(フルーツパフェ)も制します。これで126対18.5。


 しかし、勢いは長く続きませんでした。次のアダチ区対決でロナータは限界を迎えます。


「もう……ダメ、ムリ……」


 とろけるようなパンケーキを前に、ロナータは動けなくなってしまいました。


「どうした。フォークが動いていないぞ!」


 神さまの声援もむなしく、ミカエルが完食。オオタ区に次いで面積が大きいアダチ区を制したことで、126対81.6とロナータに大きく迫ります。


 そして、そのままネリマ区対決(チョコレート対決)もミカエルが勝利します。ついに、126対138.7と、ミカエルが初めて逆転しました。


「やったー、やりましたよ! ミカエルさま!」


 ラファエルは両手を振って喜びましたが、ミカエルは油断していません。


「まだ勝負は始まったばかりだぞ」と漏らしました。


 事実、次のシンジュク区(フレンチトースト)ではロナータが意地を見せて勝利しました。しかし体力が続かず、次のスギナミ区(イングリッシュスコーン)はミカエルの勝利。追いつ追われつの一進一退の攻防が続きます。


 勝負が大きく動いたのは次のイタバシ区対決でした。




 ここでロナータが覚醒します。

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