第31話 さすがだよ、にいちゃん!
一方、こちらは出題者待機部屋、もといダンジョンの主がいる部屋です。
「さすがだよ、にいちゃん!」
「そうだろう、有名配信者たちが苦しんでやがる」
二体の悪魔の前にある岩製のディスプレイには膝をつくザンテツの姿が映し出されていました。
「やっぱにいちゃんはすごいな。ただの洞窟をここまで改造しちゃうんだもん」
「やめろよズッコ。お前のアイデアがなければ、このダンジョンは生まれなかったんだぜ」
話しているのは神さまに二連敗中のズッコと、かつて岩を操り、ロナータたちを苦しめた(?)デーモン=アカツキでした。
「ねえねえ、これでアイツら倒したら、魔王様にズッコを推薦してくれるんだよね」
「ああ、もちろんだとも。ワイは魔王様のお気に入りだからな。わがままの一つくらい聞いてくれるさ」
ズッコは嬉しそうにピョンピョンと跳ねました。
「よ〜し、最終問題はとびっきり難しい問題を出しちゃうぞ〜!」
***
三度目の暗闇。
泣いても笑っても、これが最後の問題です。これに答えられなければ、ザンテツは二週間待たないと再びこのダンジョンを訪れることができません。
(頼む、簡単な問題であってくれ……)
ザンテツは神にも祈るような心持ちで出題を待ちました(神さまはいるけど)。
『それでは問題です!』甲高い声が問題を読み上げました。
第三問
2353メートルの山で、
短い。しかも与えられたヒントはたったの二文節。
2353メートルの山なんてたくさんあります。ましてや、ザンテツは山一つ一つの正確な高さまで把握していませんでした。
鼓動が高鳴ります。これに間違えれば、二週間調査が滞る。約束していた探索期限には間に合わない。しかもそれが自分のせいだなんて……。旧知の仲である異世界警察の同僚はきっと眉を顰め、軽蔑の視線を送るでしょう。
(やめろ。そんな顔で俺を見ないでくれ……)
ザンテツの脳裏に幼い頃のいじめられていた記憶が蘇りました。何も見えない、何も聞こえない空間は、彼の心を閉ざし、封じられたトラウマを掘り起こそうとしました。
ですがそのとき、
『テステス、こちら神だ。聞こえるか?』
頭の中に出題者とは別の声が聞こえました。
『ロナータ?』
『うん、聞こえるよ』
『ジャスミン?』
『バッチリよ』
『ザンテツはどうだ』
「あぁ、聞こえてる」
ザンテツは俯いた顔を上げました。
そうだ。勝機はこちらの手にある。ザンテツたちは、最終問題が始まる前に作戦会議を行いました。それは神さまのテレパシー能力を使ったもの。
すなわち——
『では、作戦通り
ズルといえばズルかもしれません。バレれば炎上間違いなしでしょう。
しかし、四人は彼らにしか通じないテレパシーを用いて意思疎通を行なっています。配信画面からは四人が何も喋らず棒立ちしている姿しか映っていません。
ヤラセは往々にしてあることです。
大切なことは、「そこに
四人がそれぞれ与えられた問題文を述べたことで、問題の全貌が明らかになりました。
2353メートルの山で、旧戸隠連峰の主峰であり、シン・トウキョウにある日本最高峰の山は何でしょう?
『ザンテツ、大丈夫そう?』
ロナータの声にザンテツは笑みを浮かべました。
「あぁ。これくらいの問題なら余裕だ。小学生レベルだよ」
『さあ、それでは回答をどうぞ!』
何も知らない出題者の声に合わせてザンテツは回答を述べます。
やがて暗闇が晴れ、全員の回答が判明しました。
ロナータ「高妻山」
神さま「高妻山」
ジャスミン「高妻山」
そして、ザンテツ「高妻山」
『正解は高妻山。ということで、全員正解で〜す!』
>きたぁ!
>88888888
>うおぉおおぉお
>おめでとうございます!
>やった!!!!
コメント欄も大盛り上がりです。
『というわけで、正解者はダンジョンの主とご対面で〜す!』
アナウンスに従って扉が開き、軽快な音楽とともにズッコとアカツキが出てきました。
「おめでとう! 神さま、ロナータ!」
ズッコは自身の推薦がなくなったはずなのに、嬉しそうに近づいてきました。
「やっぱ君だったんだね」
ロナータは笑みを浮かべながらズッコの頭を撫でます。
一方のアカツキはバツが悪そうに苦笑いを浮かべていました。完全無欠のギミックを突破されたこともそうですが、ジャスミンが鋭い視線を送っているからでしょう。
それでも意を決した彼は、手を差し出しました。
「おめでとう。ここまで来れたのは君たちが初めてだ。記念して…………」
しかし、最後まで言い切らないうちに
「おりゃあああ!」
ザンテツはチェンソーストライクを繰り出してアカツキを吹き飛ばしました。ここまで味わった恥辱の数々に彼の精神は限界を迎えていたのです。
吹き飛ばされたアカツキは壁に激突し、目を回しました。
「うわぁ、にいちゃ〜ん!」
血の繋がっていない兄に駆け寄るズッコの声がダンジョンに響き渡りました。
ロナータの登録者数:34109→34765
——————
読んでいただき、ありがとうございます。
もし、よろしければ星やフォローをお願いします。
さらに、お褒めの言葉をいただけると泣いて喜びます。
引き続き、拙作をよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます