第19話 秘密の花園——Secret Garden——
ここはスガモ・ダンジョン、最下層。ボスが鎮座する空間です。
周囲を堅牢な岩壁で覆われた部屋の中央には岩でできた玉座が置かれ、その上でダンジョンの主が
「ハッハッハッ、ついに来たぜワイの時代!」
と、高らかに笑っていました。
デーモン=アカツキ
●レベル:28
●体力:35
●魔力:60
●筋力:20
●防御力:30
●多才力:25
●速力:18
●魅力:19
●コアスキル:エクスパンド・ヴォルト
このアカツキという悪魔、レベルがそこまで高くないのにダンジョンの主になれた理由は、彼のコアスキルにあります。
彼のコアスキル「エクスパンド・ヴォルト」は地面を自由に操ることができ、
「ダンジョンを作成して三ヶ月。最初は人間を美味しく食ってやろうと思ったら、やってくるのは干からびたジジイとババアだけ(スガモは老人の町だぞ!)。仕方なしにマッサージしてやったら、いつの間にかマッサージ店だと勘違いされてM&Aを持ちかけられて……。なんだよM&Aって。よくわからねえから断ったけどよ」
アカツキは顔を上げると、魔力で岩壁に映像を表示させました。映像は監視カメラのようにダンジョンの内部を映しています。
「でも、ついに……」
アカツキはニヤリと笑みを浮かべると、一つの映像を拡大しました。そこにはジャスミンの顔が画面全体に映し出されています。
「ウッヒョ〜! ついにやってきたぜ、ピッチピチのかわい子ちゃん! 自らの手で食事となり、ワイの目の前で恐怖に震える表情。
フ〜〜、想像しただけで最っ高だぜ!」
少し変わったダンジョンの主、デーモン=アカツキは雄叫びをあげました。
「イヤッホ〜イ!」
***
「元気がないぞ。あの娘が相撲好きであることがショックだったか?」
ザンテツとジャスミンの数歩後ろを歩くロナータに神さまが声をかけます。
「いや、そういうわけじゃなくて……」
ロナータは険しい表情で俯いていました。
「やっぱり無理にでも止めないと」彼は顔を上げて神さまのことを見ました。
「神さまの力を使えば、あの扉を壊すことはできるよね」
「できなくはないが……良いのか?」
ロナータは力強く頷きます。
「これ以上、仲間を危険に晒すことはできないよ」
「しかし、貴様も知っているだろう
「う、うん」
神妙な面持ちで頷くロナータに神さまは顔をぐいと近づけました。
「なら、このまま行けば見れるのではないか?
あの女の
ムン!
ロナータの全身に衝撃が走りました。
彼はその可能性を考えていませんでした。「青天の霹靂」とはまさにこのこと。ジャスミンの
童話の最後では兵士たちが悪い怪物に服を脱がされそうになります。すなわち——
『イヤッ、ダメ〜!』
チビ悪魔に服を破られ、必死に大事なところを隠そうとするジャスミンの姿が脳裏に浮かびました。
ロナータの心臓が大きく拍動します。
神さまの力を使えば、この局面を打破することは朝飯前です。しかし、それは「お楽しみ」を見た後でもいいのでは?
彼は頭を抱えました。ジャスミンの「
果たしてロナータは首をブンブンと横に振りました。
「ダメだ。やっぱここで解決しよう」
神さまは落胆のため息をつきました。
「まったく、つまらんやつだな貴様は」
***
その頃、ザンテツとジャスミンは第五の扉の前にいました。看板には『塩を身体中に塗ってください』と書かれており、看板の隣には山盛りの塩が入った壺が置かれていました。
「これが上位悪魔の風習なのか?」
「ほら、あれよ。力士が土俵に上がる時に塩を撒くから、それを体に塗りつけて……、あれ?」
アワハラの推理を真に受けた二人は右往左往しています。
そのとき、
「みんな、離れて!」
神さまの力によって筋力パラメータが100になったロナータは、二人が扉から離れたことを確認すると、
100メートルある距離を一歩で近づき、
扉に向かって拳を打ち付けました。
パラメータ100は全ての概念を覆す。
どんな攻撃にも傷ひとつつかなかった岩製の扉は木っ端微塵になりました。
***
そして、ロナータの拳が繰り出した風圧はダンジョンを突き進み、
「えっ?」
悠々自適に構えていたデーモン=アカツキを吹っ飛ばしました。
玉座から壁へ。体を強く打ち付けたアカツキは目を回して動かなくなりました。
***
ぽっかりと穴が開いた扉を前に、ザンテツとジャスミンはポカンと口を開けていました。
穴の中心で拳を突き出していたロナータは、
「これで、花園は回避された」とどこか寂しげな表情を浮かべていました。
ロナータの登録者数:10684→10721
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