第6章 変なダンジョンだけど、なにか?
第17話 このダンジョン、何か『変』
ここはスガモ・ダンジョン。
どこのダンジョンとも似た、岩壁に囲まれた通路を一行は歩いていきます。
メンバーはロナータ、ザンテツ、ジャスミン、そして神さまの四人です。
「ありがとう、ザンテツ」
歩きながらロナータは口を開きました。
「まさか誘ってくれるなんて思わなかったよ」
「この前の礼だ。お前の姿勢に俺も学ぶところがあったからな」
ザンテツは自慢のバトルアックスを肩にかけました。
「それより、そろそろ聞いていい?」ジャスミンが尋ねます。
「このダンジョンには一体何があるの?」
ザンテツは神妙な面持ちになりました。
「あぁ、そろそろ言わないといけないな。どうやら、このダンジョン、
何か『変』らしい」
みんなシーンと黙り込みます。
「『変』って?」ロナータが口火を切りました。
「ああ。ダンジョン専門家のアワハラさんによると、このダンジョンには変な噂がたくさんあるんだそうだ」
「変な噂? ホラースポットみたいね。どんなのがあるの?」
「一つ目は、入る者は全員フニャフニャになるんだそうだ」
ザンテツの言葉にロナータとジャスミンは身震いしました。
「そして二つ目は、このダンジョンに入ると
「出にくくなる? 出れない、じゃなくて?」
「出れはするそうだ。ただ、出る方法が面倒くさいらしい」
「なにそれ」
「そして三つ目はどうやら
再び静寂が訪れます。
「えっ、買おうとしてる人がいるの? このダンジョンを?」
「なるほど、確かにそれは奇異なことだ」
ここで神さまが口を開きます。
「シワシワになり出にくいダンジョン、そしてそれを買おうとしている者がいる。一体、このダンジョンには何が隠されているのだ?」
ロナータの眉が歪みます。
「それよりもダンジョンを買おうとしていることじゃない? ダンジョンって法律で買えないって決まってるはずじゃ……」
「確かにそうね」
ロナータの話を遮ってジャスミンが言いました。
「このダンジョンには何が隠されているのかしら」
「俺も検討がつかなかった。だが、ダンジョン専門家のアワハラさんが言うには……」
ザンテツは間を置いて言いました。
「何かとんでもない秘密が隠されているかもしれない、ということだ」
「何も分かってないってことじゃん!」
声を上げたのはロナータです。しかし、他の人は気にする素振りをせず歩き続けます。
ロナータは肩をすくめ神さまの横を歩きました。
「そういえば話は変わるんだけど……」
「どうした?」
「……その、大丈夫なのかな、この話のタイトル。どこかから問題にされたりしない?」
「何を言ってるのだ、ロナータ。どこにでもありそうな普遍的なタイトルではないか」
神さまは見上げるようにロナータの顔を見ました。
神さま「それよりあそこを見ろ。雨水が地面に穴を————」
ロナータ「うわああああ、ダメェ!!」
***
やがて一行は岩製の扉の前に辿り着きました。
扉は引き戸で、四人の身長を超えるほど大きく、ダンジョンの天井と隙間なく設置されていました。本体はもちろん、引き手や外枠も全て岩で造られていました。
「自然発生のダンジョンに現れた扉。明らかに人の手が加わってるな。やはりこのダンジョンには何か重大な秘密が隠されていそうだ」
ザンテツが言ったそのとき、ゴゴゴと音がして隠し扉が四人が来た通路を塞いでしまいました。
「クソッ、やられた!」
ザンテツはバトルアックスを取り出し、帰路を塞いだ扉に攻撃を仕掛けました。しかし、扉はびくともしません。進行方向にある扉も同様でした。
「気をつけろ! さらなる罠が仕掛けられているかもしれない」
言葉が終わるや否や、再びゴゴゴと音がして、進行方向に一枚の看板が出現しました。
『お客さまがた、ようこそお越しくださいました。ここで髪をきちんと整え、それか
ら履き物の泥を落としてください。さすれば次の扉が開くでしょう』
突然現れた看板の指示に四人は顔を見合わせました。
「どうしよう……」
「罠の可能性は十分に考えられるな」
困惑するロナータとザンテツに対してジャスミンは冷静でした。
「でも、看板の指示は髪を整えて、靴の泥を落とすだけでしょう。それくらいで開くならやってもいいんじゃないかしら」
四人は髪の毛を整えて靴についた土や泥を落としました。
するとゴゴゴと音がして扉が開きます。
「しかし、帰路を塞がれてしまったな」
ザンテツが来た道を見ながら言いました。そこには傷ひとつない岩の扉が仁王立ちしていました。
「もしかして、アワハラさんが言ってた『出にくくなる』ってこのことなのかもね」
「でもザンテツの攻撃を受けても無傷だなんて……」
一抹の不安を抱えながらロナータたちは先に進みました。
***
しばらく歩くと、一行は別の扉の前に辿り着きました。
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