優れた小説は、読む者の精神にも影響を与える
——不気味だ。
語り手の「私」が直面した異様な世界を思い浮かべただけで、本を持っている西宮の手は嫌な汗をかいていた。
『異物』の作者の文章は特別上手いというわけではないが、一度読み始めた者を惹きつけるような異彩を放っている。
それにしても作者は何者なのだろうか? 活版印刷が流通したこの時代に手書きの原稿用紙をまとめて本にするとは、これまた古風で粋なことをする。
「何かあったのかな……」
中盤まで読んでいくうち、西宮は頁の中である変化が起きていることに気づいていた。
文字が徐々に汚くなっていくのだ。最初の頁では一文字一文字丁寧に書きこまれていた文字は、頁を追うごとにつれ、ぐしゃりと潰れたように乱れていっている。
読めないことはないが「もっと丁寧に書けばいいものを」と言う心地になってくるのは確かだ。
首を傾げつつも、文字列を読み進める。
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