第30話 動く鉄要塞

「あーーー、もうやだなーーー!ストライダー共は喧嘩したがるからなーーー!!!野蛮でなーーー!!!あーーーーー!!!!」


「もー、機嫌直してよ、ドルー!」「ん、子供」


あーーー!もうなーーー!あーーー!


……と、ストライダーギルドでいじける俺。


そろそろ気温も安定してきて、過ごしやすい時期になってきたからな。病人は減り、仕事も今日のところはない。


なので俺は、ギルドで女達によしよしされることにより、ささくれ立った心を癒していた……。


「ほらほら、おっぱい揉ませてあげるからさあ」


「うう……、揉むほどねえ……」


「ははっ、ぶっとばすよ?」


シオに怒られつつも、もう片方の手でマーゴットの乳を揉む。まあ、マーゴットは中盛りくらいかな?シオは無。


「安心しろ、シオ。妊娠すれば多少は大きくなるし、小さくても病気ってほどじゃない。お前は何の問題もない健康体だぞ!」


「そっかあ、ドルーがいつか孕ませてくれるもんね!じゃあ、大丈夫だー」


「えっ、嫌です……」


「はぁ?駄目だよドルー?ギラ族の女戦士は、狙った男を逃さないから」


ひえー。


「ん、私は、ドルーとずっと、一緒……。永遠の時を、一緒に生きる」


マーゴットはクソ重い。


まあエルフだから、大体永遠と言えばそうなんだが。


俺もチェンジリングだしな。


「ずるいですにゃ?!私もー!」


おっと、抱きついてくるミレディ。


「……にしても、ドルーさんって、あんなに強かったんですにゃ!惚れ直しちゃったにゃあ!」


んー?


ああ、先日の模擬戦を観ていたのか。


「それほどでもない」


俺は謙虚にもそう言った。


「すごいにゃー、憧れちゃうにゃあ〜!」


うーん、めっちゃヨイショして貰えるなあ。気持ちええ……。


でも別に、強さは俺の誇らしい部分じゃないのよね。魔法もそう。


いや……、剣の腕は自前だけど、魔法の力は貰い物だからさ。


貰い物を誇ることはできんでしょ。


なので、顔とか職能とかを褒めてもらった方が嬉しくはある。顔は血統関係なく、チェンジリングだから運なんだが……、職能は前世で培ったもの。そこを褒められると、自己肯定感が爆上がり。


それは良いとして……。


「君ら、仕事はやらんで良いのか?」


と、シオとマーゴットに訊ねる。


お忙しいはずの『青のほうき星』様方が、こんなところで水を売っていて良いのかね?


「魔窟はこの前潰したばっかりだし……、今のところは大きな仕事はないかなあ?」


「ん……、『青のほうき星』は、大物狩りが専門……」


あー、そういやそうだったか。


『守護者の盾』が貴族や豪商の護衛などを中心に、エライ人相手の依頼を受ける。


『導きの鷹』は、山林の管理維持と、狩猟採取。


『狼の牙団』こそが、テンプレ的ストライダーでどんな依頼も受ける荒くれ者……。


そして、この子達が所属する『青のほうき星』は、魔窟(ダンジョン)の攻略及び破壊と、グループでの大型魔物の狩猟……。


そんな風に、ストライダークランはそれぞれ、特色というか得意な戦場があるのだ。


で、この子達は大物狩りが仕事。


それとは別に、この前のシオのように、金がないからと個人で小遣い稼ぎ程度の依頼を受けることも普通にあるが、それはそれとして……。


基本的には、このミッドフォード地方にできた管理外の魔窟を破壊して、モンスターの氾濫を未然に防いだり……、街に向かってくる大型モンスターに対処したりするのがメインなのだった。


大物狩りは、一度に入る金が多いから、休みの期間が長いのは納得だな。


「あ、でも、ドルーがやりたいんなら、プルラン湖の要塞蟹でも狩りに行く?うちの後輩三人くらい連れてー、僕とマーゴットがいれば、行けそうじゃない?」


「要塞蟹……、フォートレスクラブか……」


鉄のように頑丈な甲殻を持つ、全長5mくらいの巨大な蟹だな。


地球のライフルでも弾きそうな鉄の甲殻が厄介で、ハサミに挟まれたら人間なんて胴体も真っ二つ……。


だが、そんなに動きが速い訳でもないし、魔技が使える複数人で囲めば対処は可能。


そして何よりも……。


「ん、私がいる。何とかなる」


このモンスターは、電撃に死ぬほど弱いのだ。


「雷光」の真語を扱えるマーゴットがいれば、正直カモである。


「魔法で仕留めれば甲殻が丸っと残るから……、三百万リドは固いよ〜!」


六人で割れば五十万くらいか。三百万とは言うが、恐らくは超えるだろうし、その分の端数は経費だとして……、うん、悪くない仕事だ。


まあ金は正直どうでもよくて、可愛い女の子達と狩りに行けるならもうその時点でアドだからね。


「後輩っても、面子はどうすんのよ?」


「えーと、シャーリーとハンナと……、後はロアで良い?」


「シャオリンとハナコとロアだな。良いんじゃないか?」


「もー、発音分かんないよー!ロアは部族民だけど、シャーリーとハンナは東方人だし……」


「シャオリンは『大陸』の北側、山岳の民。ハナコは『アズマノクニ』の鬼人種だな」


「分かんないよ、違いがー!」


「まあ、外国だもんなあ……」


「とにかく、明日集まるように言っておくからね?」


「ああ、頼むよ」


こんな感じで、予定ができた……。

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