第5話 友であり、女である
無料キャバクラ。
キャストは美女ばかり。
媚びっ媚びの巨乳猫娘と、ボーイッシュ僕っ子アマゾネス、そして白髪ロングの美エルフ。
もう最高なんだよね。
特に美味くもないワインと、美女との会話を楽しむ。
「また『魔窟』を攻めてたんだろ?どうだった?」
俺は、シオに話題を振った。
「もー大変だよ〜!よりにもよって『アーミーアント』を呼び込んでる魔窟でさあ〜……。『ソルジャーアント』ならまだしも、『キラーアント』までいて!」
シオはその眠たげな半目を見開いて、大袈裟に言う。
アーミーアント、軍隊アリか……。
確か虫系のモンスターで、猪くらいのデカさのクソデカいアリだったな。
キチン質の甲殻は下手な刃物を通さないくらいに硬くて、大顎はペンチのように強くて人の指くらい簡単に食い千切る。
何より面倒なのは数が多い上に、アンデッドのように怯まないのだ。自己保存本能が薄いんだろうな、仲間を蹴散らしてやっても、何も考えず機械的に襲いかかってくる。
「キラーアントは、まあ、マーゴットの魔法でやれたけどさあ……。問題は『クイーンアント』だよ!」
「お、『巣』になっていたのか」
「そうなんだよ〜!知ってる?クイーンアントってすっごいデブの大アリでさ、気持ち悪いったらないんだよ?!あいつの酸で僕の大剣も溶かされちゃったし!」
クイーンアント、女王アリ、な。
ゾウくらいでかい丸々太った巨大なアリで、アリのモンスターを産んで増やす害悪だ。生産特化なのかと言われるとそうでもなく、普通に酸液を飛ばしたり、巨体で突進や押し潰しをしてきたりとかなり強い。
「ほら見てここ!抉れちゃってる!」
シオは、背中に背負う巨大な剣を見せてくる。
確かに、大剣は、峰の部分に拳ほどの抉れがあった。
「あーこりゃダメだな、買い換えた方が良い」
「だよねえ、これもうダメだよねえ。うう……、大剣はすごーく高いのに……」
がっくりと肩を落とすシオ。
まあ確かに、鋼鉄の塊である大剣は高価だな。
しかし、二級ストライダーともなれば、買えない額の買い物でもないはずだが……?
「また報酬金を使い込んだのか?密林ではそれで良いのかもしれないがな……」
「はいはい、分かってますよーだ!……でも、美味しいものを食べたり、装備を買ったりするとすぐ無くなっちゃわない?お金って、変だねー?」
「なら、もっと立ち回りを工夫すれば良いんじゃないか?」
「ええー?でもさあ、うちのクランはみんな女の子だから、僕が前に出て守ってあげなきゃさあ。街の子はやっぱり、顔とか綺麗にしなきゃ、お嫁さんになれなくなっちゃうんでしょ?」
「お前も女の子だろ」
「僕は密林の『ギラ族』だから、強ければそれでいーの!それに、僕はドルーのお嫁さんになるからねー」
へーそうなんだ。
初耳だけど。
「そうなんだ、初めて聞いたわ」
「あれー?言ってなかったっけ?じゃあ今言うけど、ドルーは密林に連れて帰るね!」
「ははは、それは困るなあ。店あるし」
「じゃあ店ごとおいでよー!」
チラリ、と。
隣を見る。
……うわあ、ミレディが凄い顔をしているぞ。
「だっ!駄目にゃ!ドルーさんを連れて行かないでにゃ!」
「え?なんで?」
「そ、それは、ドルーさんがいないとみんな困るので……」
「別に、どこでも商売はできるんじゃないの?ギラ族も、別に洞穴でゴブリンみたいな暮らしをしてる訳じゃないからね?」
「とっ、とにかくダメにゃあ!ドルーさんはここにいるのにゃ!」
おー、猫のファイトでキャットファイトだ。
おもしれー。
……ん?
マーゴットが俺の服の裾を引っ張ってきた。
何々……?
「ん、遠く行くなら、私も一緒」
あ、はい。
「その時は連れてってやるよ。まあ行かないけどな」
「ダメにゃ!絶対ダメにゃあ!」
おっと、まだやってるのか。
「ミレディも来る?」
「……いや、ダメにゃ!密林はダメにゃ、王都みたいな都会に引っ越すならともかく!」
今一瞬考えたな?
「んー、でもオババ様にもそろそろ紹介しないと拙いし、一回連れてくのは良いよね?そろそろ五年になるし、報告したいなあ」
あ、一応だが。
俺は二十五、シオは十八、ミレディは十六。マーゴットに至っては四十九歳だ。
まあマーゴットはエルフなので良いとしても、この世界は魔力の影響で老けにくい。
シオは十五歳くらいにしか見えないし、マーゴットもいいとこ二十歳そこそこ。
俺は老け顔って訳じゃないが、顔の作りが違うんで年相応には見えるだろうが……。
それでも、俺は『チェンジリング』なんで、多分千年くらいこのまんまだろうな。
それに、高濃度の魔力を吸い込めば若返るんで、それを利用した若返りの薬もあるらしいぞ?死ぬほど貴重らしいが……。
そんな訳で、年齢ってのはあんまり気にされない観点だ。
「お、親に紹介……ってコトにゃあ?!う、うちだって、お父さんの許可はあるにゃ!」
「ギラ族は、強い男には何人も妾がいるのが普通だし、ミレディとマーゴットも付いてきていいよ〜」
「にゃ〜!」
ふふふ、面白いね。
このラブコメ空間、ワイン代とちょっとしたツマミの代金だけで楽しめちゃって本当にいいんですか?
席代とか取らなくていい?五万くらい払うけど俺?大丈夫?
あー……、マジで楽しいな、生活!
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