第6話 変わっていく

 ずっと、そうして過ごしていたかったわたしの思いとは逆に、少しずつ小林こばやしくんとの関係がずれていく。

 秋も終わりに近づくころ、とうとう席替えで小林くんと離れた席になってしまった。

 話す機会が減っていき、ノートを借りに来る頻度も少なくなった。

 席が離れただけで、遠い存在のようになってしまったのが切ない。


 どんなにほかの人に仲良く見えたとしても、結局はただのクラスメイトでしかなかったんだなぁ……。


 もし、彼女の存在があっても告白していたら、なにか変わっていたのかな?

 席が離れてしまっても、話しかけに行ったり来てくれたり、以前と変わらないように話せたのかな?


 でも……振られる可能性が高いのに、告白をする勇気なんて、わたしにはなかった。


 自分の席でモヤモヤした気持ちを持て余したまま、小林くんの横顔を眺めていた。

 フッと小林くんの目がわたしに向き、慌ててうつむいて視線を反らす。


(わたし、怪しい人みたいじゃん……)


 キモいと思われたらどうしようと思いながら、小林くんより後ろの席にいるのをいいことに、わたしはその姿を何度も見つめていた。

 視線に気づくのか、そのたびにつと小林くんの視線が向き、パッと反らす。

 ふと目を向けると、目が合うことも増えたけれど、小林くんのほうもサッと反らしてしまう。


(あ……これもう完全に、キモいと思われているかも……)


 なにもできないまま、ただ離れていくのを感じていることしかできなかったわたしに、ある日、美也子みやこが慌てた様子で話しかけてきた。


悠里ゆうり、小林くん、彼女と別れたって聞いた?」


「え……知らない。最近、話してないし……」


「あっ、そういえばそうだね……あのね、少し前に別れたらしいよ」


 美也子の話では、クラスで割とよく話す女子から聞いたという。

 しかもバイク好きを知った目立つグループの男子たちと交流ができて、遅い時間まで出かけていることが増えたらしい。

 バイクが好きなのは知っていたけど、遅くまで出かけていて、絵を描く時間はあるんだろうか?

 わたしが知っている小林くんから、どんどん遠ざかっていくようで、胸が痛んだ。

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