34話「階層主」



「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」


「グゲッ」


「ギギッ」


「ピィー」


「ピャギィ」



 あれから、俺はダンジョンへと向かい、転移魔法陣を使って四階層からのダンジョン攻略を再開した。



 目的は米ただ一つであるため、ダンジョンを攻略するというよりも米に向かってただただ一直線に進撃していると言った方が正しい表現ではある。



 だってしょうがないじゃないか、日本人だもの。久しく食べていなかった米が目の前にあるというのなら、ただただそれに向かって突き進むのみなのだ。



 向かってくるモンスターどもを蹴散らしていき、念のために各階層の石碑に触れて進んでいると、あっという間に十階層へと到達する。



「ウォォォオオオ」


「あれは?」



 そこにいたのは、二メートル半はある巨体を持った人型のモンスターであった。即座に鑑定してみると、こんなステータスが表示される。






【名前】:ダンジョンオーガ(階層主)


【ランク】:C


【ステータス】



 レベル30



 体力:2500


 魔力:1000


 筋力:390


 耐久力:294


 精神力:210


 知力:78


 走力:103


 運命力:111



【スキル】:剛腕Lv2、体当たりLv2、再生Lv1





 ふむ、どうやら話に聞いていた十階層ごとにいると言われる階層主のようだ。



 一般的な冒険者にとってはなかなかの強さなのだろうが、今の俺の敵ではない。



「邪魔をするな。ほぉー、あぁたたたたたたたたたたたたたたた」


「グォ、グゲ、グギ、ガッ、ギャ、ゲゲ」


「ほぁちゃぁぁぁあああああ。……【北〇百〇拳】。お前はもう、〇んでいる」


「ギャ、ギャベシィー」



 圧倒的な速度から繰り出される攻撃は、それによってもたらされる結果が遅れてくる。俺の猛攻をくらい、一見すると平然としているように見えたダンジョンオーガだったが、すぐに攻撃の効果が表れ、打撃によってやつの肉体に変化が起こった。



 まるで肉叩きを行っているかのような感覚になったが、俺の攻撃によってダンジョンオーガの肉体は内部から破裂するかのように崩壊する。



 あとに残されたのは、ドロップアイテムの魔石と素材のみであり、まるで最初からなにも存在していなかったかと錯覚してしまうほどに跡形もなく消え去っていた。



 すぐに素材を回収し、俺はダンジョン攻略を続ける。全力でダンジョンを翔けているため、俺の姿を捉えることができる冒険者は少ないだろう。



 それから、確実に攻略階層数を稼いでいき、わずか半日という短期間で十八階層まで一気に進むことに成功するも、店主の言っていた三十階層まではまだまだ先が長い。



「おのれダンジョン。この俺の野望を邪魔するとは、いい度胸だ」



 まさか、ダンジョンに喧嘩を売る日が来ようとは……人生なにがあるのかわからないとはよく言ったものである。



 とりあえず、ダンジョンで日を明かすことは避けたかったので、今日は大人しく宿へと戻ることにした。








 さて、翌日になり最速で準備を整えた俺は、再びダンジョンへと赴いた。



 ああ、そういえば宿の店員から昨日お連れの女性が俺を訪ねてきたという情報が入った。たぶん、キャロラインだろうが、今彼女に構っている暇はない。悪いがスルーさせてもらおう。



 彼女の企みが一体どういったものかが気にならないわけではないが、聞いたところで教えてはくれんだろうし、なにかあれば全力で逃亡すればいいだけの話だ。無職であるがゆえに、この身はとても身軽なのだよ。ふふふふふ……。



 そんなこんなで、今日は十八階層から攻略を開始する。わかっているつもりだが、俺のダンジョン攻略ペースはかなり異常であり、通常一階層を攻略するのにそれなりの時間がかかるということを言っておく。



 一階層や二階層程度ならば、三十分もかからないだろうが、下層に行けば行くほど強力なモンスターや凶悪な罠が出現することを考えれば、攻略ペースが落ちるのは当然のことである。



「というわけで、これで二十階層も攻略できたことになるのだが、あれが二十階層の階層主かな」



 それでも、向かってくるモンスターたちを千切っては投げ千切っては投げを繰り返し、早々に二十階層の階層主のもとへと辿り着いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る