第4話 作戦篇②「智将は務めて敵に食む~デメリット・コストを踏み倒そう~」
【初めに】
\婚約者のお母様と私の上司にこのエッセイがバレました/
平常運転で突っ切る予定の職場はさておき、このあと(1月予定)どんな顔して婚約者の実家に挨拶しに行けば良いんでしょう。
今回のしぃる君の失敗要素これだけで十分じゃあないかなあ? これくらいにしない? とても悲しい。
ネイビーのスーツをしっかり着込んで「自慢の婿の誕生です」って面をしようと思っていたんですがもう無理と言っても良いでしょう。
どの面下げて挨拶に行けば良いんだろう……「私は人類を軒並み愚かと見下している人格の破綻した男です」って面かな……。ともかく、婚約者の実家で地元の焼酎のウケが非常に良かったと聞いたので、焼酎を持っていこうと思います。焼酎と鹿児島銘菓かるかんを持っていこうと思います。婚約者のご両親が焼酎を飲んでいい感じになってくれたら紙一重でこのエッセイを読まれているという事実から逃げ切れるかもしれません。
持って行くと言えば、お菓子や飲み物って旅行で持っていくとかさばりますよね。そう、そもそも食料や飲料というのは輸送が大変です。だから孫子は「軍を動かす為のリソースはできるだけ略奪しよう!」というカスのライフハックを現代に残してくださっています。この「敵陣での略奪と略奪した物資による進軍」はあまりにも有効なので、世界中で繰り返され、現代に至るまで対抗策がいくつも考案されています。焦土作戦とかいう自国民を苦しめるカスのカウンターなんか有名だと思います。戦争ってやつは本当に倫理観が終わっています。婚活みてえだ。
今日はそんな現代の戦場“婚活”で、金銭・時間・人間性といったリソースを可能な限り守りながら、持続可能な婚活を営む手段について検討していこうと思います。
それではよろしくお願いします。
【Today's 孫子ヒント①「智将は務めて敵に食む」】
婚活はそもそも最初のお見合いが疲れるんですよ。
お見合いにより貴重な休日を知らない人類と過ごせば、時間と体力というリソースを奪われます。これにより、普段の業務や生活に支障をきたすのなら婚活を継続できません。特に男性の婚活は期間が伸びがちなので持続可能な婚活をできるようにしておくべきと言えるでしょう。前回話したような期限と目標を設定できるのは、その決められた期間を走り切ることができる人間だけです。
そして婚活を持続可能にする為にここで考えるべきことは2つです。
・消耗するリソースを減らす(一般的な解決策です)
・お見合いを通じて得られる成果を増やす(こっちが「敵に食む」にあたります)
徒労に終わる行為を繰り返すから消耗するのです。気軽に会えるか、お見合いそのものが上手くいかなくても得られるものがあれば、いくばくかマシです。
消耗するリソースを減らす場合、簡単な手は最初の一回をオンラインのお見合いに変えることです。相談所の方針によりますが、感染回避や居住地が遠いなど、理由があれば最初の一回がオンラインお見合いになることは珍しくありません。お見合いのあと、仮交際が成立してからならば実際に会ってお茶することの徒労感は限りなく少なくなることでしょう。
逆に遠い土地までお見合いにわざわざ行くのも効果的な手法です。遠くからわざわざ会いに来た相手には、期待をしてしまうのが人間です。なので、北海道時代、この人は良い!と思った相手に会う為に深夜の高速道路で冬の函館-札幌間を五時間くらいかけて走り抜け、モーニングショーの呪術廻戦零を見てからお見合い会場に乗り込んだことがあります。お相手に超喜んでいただきました。その後の交際はトントン拍子だったのですが、お相手が仕事で思い悩んで返事が遅くなっていた時に、相談所を通じて今後の予定をそろそろ決めたい旨の話をしたため、お相手がキャパオーバーとなり……ダメでした。その時のお相手にもアカウントバレてたので、俺が日々元気いっぱい仕事に追われ文学的才能の枯渇に悩み婚活に一喜一憂する姿は見られており、それもまたストレスだったようですね。振られました。真冬の北海道の深夜高速をかっ飛ばした挙げ句振られました。
どうも私にはただありのままに楽しく生きているだけで周囲の人の心を勢いよく削ってしまうデリカシーの無さがあるようです。そういう形で削られる人にとって私はさっさと死んでくれていた方がマシだったのだろうな……としみじみ感じた一件でした。まあ私が悲しんでも誰も救われないですからね。せめて少しでも仕事で人を助け、面白いものを書き、自分の人生を肯定する材料を得るしかありません。とはいえ、無事婚活終了できたのでこのあたりはだいぶ解決されました。自分の人生を肯定する根拠の取得と任意の一名の人生を肯定する根拠となれることは、婚活の大きなメリットです。やっていこうな。
さて、じつはもう一つ、お見合いを通じて得られるメリットを増やすというアプローチがあります。
お見合いそのものからアドバンテージをとるという話です。
婚活用と言いながら仕事でも使えそうないい感じの衣服を買ったり、デートの為に美味しいスイーツのお店を探してみたり、オンラインお見合いで用意しておく飲み物をちょっと凝ったお茶っ葉や珈琲豆にしてみたり、面白そうな仕事や経歴をしている人にお見合いを申し込んで合法的に人間観察を狙うのも良いです。
ちなみに「この人おもしろそ~」って思ってお見合いを申し込むと、まあだいたいそう思ったあなたにとって面白いし素敵な人なので、お見合いの成否は別にして有意義な時間になりますよ。そういう人と喋って、話す時間そのものに満足や喜びを得られる方が、成婚は近いと思います。婚活のお見合いって「問題なく話せる相手か」を見極めるのが大事な場ですからね。
私は人間が終わっているので「興味のない話題や相手でも1時間楽しく喋る訓練」とかもやってました。気になってた相手から出る興味のない話題とか、申し込まれたのでひとまずお見合い受けたけどなぜ申し込んできたのかさっぱり分からない相手とか、婚活をやる限り出くわします。そんな時にも相手の興味や話題に合わせて話せるように下調べを元に色々話してみたり、適切と思われるリアクションをとってみたり、聞いた話からあまり興味無いなりに所感を述べて喜んでもらったり、自分の興味がある話題も振ってみたり、そういうことをします。知らない話題が来た時に黙り込むよりは知的にも人格的にも誠実で、相手も楽しんでくれるし、婚活的にも「他者に合わせようとする性格・行動」は評価してもらえる傾向があるので、困った時はやってみてください。
オンラインお見合いの時は特に、興味のないことや話しづらいことについて咄嗟に調べながら話をすることが容易なので、こういう観点からも初回はオンラインお見合いをおすすめしたいです。
結局お相手のご両親が「一人娘なので健康面で不安がある人は困るんです」って言い出して振られちゃったんですけど、美人の女医さんと映画について話した時とかは、自分が知らない映画のジャンルについて知見を深めることができて最高でした。
そもそも、お見合いの経験は仕事に役立ちます。知らない人間と一時間恙無く話すスキルが仕事で役に立たない訳がありません。私は薬局で薬剤師として八時間みっちり患者さんと話をするので、お見合いや婚活パーティーの「決められた時間でひとまず会話をしてみる」という経験がとても役に立ちました。
結婚はよりよい人生の為の手段なのだから、婚活だってよりよい人生の為の手段であるべきです。莫大なコストを使う以上、徹底的にアドバンテージをとりにいきましょう。
【補足①】
結婚相談所にいかねば……と悲壮な覚悟を決めた男子学生の皆様におかれましては、街コンなどもいいと思います。身近な人間のコンパは社会性が足りず出席できなかったり、もし出席してもやらかして今後の社会活動に甚大な被害を与える可能性があります。どうせ失敗するなら自分とは縁もゆかりも無いところで失敗しましょう。
これは社会人も同じです。婚活をする限りあなたは失敗します。自分の勤務している場所で失敗するくらいなら、結婚相談所で失敗しましょう。婚活の英霊たる相談員さんは不甲斐ない契約者であるあなたを守り、いい感じに助けてくれるし、宝具とか発動して婚活戦争を勝利に導いてくれます。
【Today's 孫子ヒント②「故に兵を知るの将は、生民の司命、国家安危の主なり」】
戦争は本当にろくでもないものです。その危険性を弁えた人間こそ、民を守り国を治めるべき人間だ……と孫子はおっしゃいました。
婚活もそうです。
婚活は本当に厄介なものです。人生を破壊しかねない危険性を帯びています。弟妹にはこんな恐ろしい
婚活そのものの難しさというのは
・戦場を熟知した強く頼もしい相談員さんと真摯なコミュニケーションがとれてなければ概ね即死する極端な知識ゲー
・自分の価値も流動的なせいで難航しやすい目標設定
・初手にあたるお見合いの申し込みにおける運要素の高さ
といった初見の心を折る要素がこれでもかと詰め込まれているところです。とにかく「どんな状況でも勝つまで最善手を打ち続ける」ことが求められるのに、人類は愚かなので決断の負荷に耐えられません。決断の負荷に耐えられても目標設定や極端な運要素に耐えられなくなって頭が爆発してしばしば死にます。人類は愚かです。壁を登るか穴を開けるか抜け道を探すか考えられるのが人間の美徳のはずなのですが……。
人類は愚かなので「自分と同じくらいの年頃で話しやすくて一緒に居て心地よい人が良いなあ」と何故か思わないんですよね。仮に思っても、血反吐を吐きながらそういう相手に出会えるまで走り続ける悲しいマラソンをしません。もったいない。
これは俺のお世話になった相談員さんと意見が一致したのですが、成功するまで最適手を打ち続けながら試行回数を重ねれば誰しも縁は有ると思っています。なのに人類は継続を放棄します。人間には素晴らしい可能性があるのに、その人間が可能性を捨てるのです。その愚かさに私は耐えられなくなるときがあります。生まれ持った可能性をドブに捨てる為に生まれてきたわけじゃない筈です。
人間は何もしなくても緩やかに死にますし、病気・事故・怪我・働き過ぎなどで急速に死にます。何もしなければ消えていくばかりの生命という有限のリソースを削りながら、決められた時間内に求めた成果を出す。そう考えると婚活を通じて自分がどういう人生を送りたいのかに向き合うことになると思うのです。
だから「故に兵を知るの将は、生民の司命、国家安危の主なり」という孫子の言葉は、「婚活に取り組むことで自分のライフプランを見つめ直そうね」という読み替えが可能だと思っています。
【補足②】
とはいえ、正直そんな事考えなくても成婚する時は成婚すると思います。要は良い御縁があるかどうかのガチャなので。
ガチャを回してもなかなか上手くいかないと感じている時に、戦略の見直しやリソースの割り振りについて考えたり、そもそもガチャ回してるつもりで無意味な行動を続けている可能性を考えれば良い。何も考えず快勝できるならまずは思い切り快勝してしまいましょう。
振り返っていただくとお気づきいただけるとおもいますが、作戦篇での話は基本的に婚活によって発生する為のマイナスを可能な限りゼロに近づける為の話であって、直接的に幸せを生み出す為の話にはなっていません。だからこそ、作戦篇ではマイナスに飛び込めという話をしていました。
だから勘違いしないでほしいのは、結婚以外のものを求めて婚活に向かったりはしないでください。特に興味がなくても1時間会話を続けられるスキルとか、自分がどういう人生を送りたいかのビジョンとか、婚活以外でも得られますから。
【まとめ】
◯婚活は百害あるし利が得られるかは分からない!(けどそれってなにかに真剣に取り組む上では普通のことだよね)
◯婚活してる限り消耗は避けられないので婚活のコストを最大限踏み倒そう
今回お伝えしたいのはこのあたりです。そして今回こそ私の婚活が波乱万丈だったことが伝わったことでしょう。血が見たいと言っていた皆さんにも満足いただけていれば幸いです。
ですがひどい目にあった話は勿論これだけではありません! まだまだまだこの胸の中には血が残っています! 社会人なりたての頃、カクヨムで今をときめく某先生にご迷惑をおかけしながら涙とともに結婚相談所に駆け込んだ時代や、学生時代に初めての印税を握りしめてユニクロに駆け込んで街コンに最低限行ける服を手にしてからのエピソードなど、悲惨な思い出は沢山あります!!!!!! あってもしょうがねえんだよ!!!!!!
それではまた次回! お疲れ様でした!
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