第19話 最終女神計画
「これ、買ったんですよ。だからお話しする
私が右手でひらひらさせたのは、QRコードの刻まれた一枚のチケット。劇場で一枚千円で販売されているリモートお話券なるもの。
これ一枚につき約一分間、アイドルと一対一でのライブチャットを楽しめるという。
「ネットのライブ配信越しでも魔眼って効果あるんですね。鏡と違って魔力を反射しないからか……」
生徒会長は眉根を寄せて、無言で聞いています。
「まさかチャット越しのファンを石化してたなんて。そういう、ファンに
「……ッ……! うるさい! 私は、
「……ふうん。やっぱり
集めた情報のなかに、
その多くはアイドルとのライブチャットにハマっていたというのです。あくまで、そこからの推測でしたが。
──彼女は私の
それにしても、これまでずっと淡々としていた彼女がはじめて声を荒げた。この反応はおぼえておきましょう、なにかの鍵になるかも知れないから。
「……よくもまあ調べあげたものね。さすがは狡猾な
「お褒めの言葉、とっても光栄です」
「呆れているだけと言ってるでしょう。そしてあなたは、全て理解した上でなお私の舞台の邪魔をした、ということね」
乗せられたことに気付いたのか、彼女はすぐに冷静さを取り戻す。
その辺りはさすが、才色兼備の氾濫するこの聖条院女学館で生徒会長を務める器です。
プロデューサーと裏取引して、最終女神計画のセンターになる。そして大晦日、日本中のお茶の間に、国営放送の電波に乗せて
それが彼女の計画した無差別大量石化の、文字通りの
アイドルとしての彼女は凄まじく魅力的で、それだけに、ふだん興味のないひとたちも画面に釘付けにすることでしょう。
そこで魔眼を発動する。
なんてふざけた、そしておそろしい計画。
昨夜、件の
──御堂のアカウントから送ったDMに即返信してきた彼は、誘い出すまでもなく「絶対にバレる心配のない部屋」を準備してくれました。
欲の皮ではちきれそうな彼の
──これで最終女神計画は、まず間違いなく白紙。
「いったい、どういうつもり? 私の話が理解できなかった? このままでは天秤が傾きすぎて世界が壊れてしまう。だから私たち転魔は、人間どもに復讐しなきゃいけない」
彼女の言葉の端々に、怒りと人間への憎悪が滲んでいた。対する私は、淡々と応じます。
「──それって、私の知らない女神とやらの、天秤どうこういう胡散臭い話でしょう? そんなもの、知ったことじゃない」
心の底からそう思う。
「邪魔をするなら、ここで消えてもらうしかないの。あなたは狡猾で小賢しい小悪魔でしょう? 身のほどをわきまえて、それらしく立ち回りなさい」
「お気づかいありがとうございます。でも、おっしゃる通り私は
自分の心に、お母さまに、そして
「清く正しく──清楚系の名のもとに、あなたの陰謀を阻ませていただきます」
胸に手のひらをそっと添え、涼やかに言い放つのでした。
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