2つの栞
執行 太樹
膝の高さぐらいしか無い、小さなテーブル。
その上には、朝日に照らされた置き時計と、1冊の文庫本。
恋愛小説だった。それはそれは、小さな恋の物語。
その本には、栞が2つ挿し込まれている。
子犬のイラストが描かれた私の栞と、洋画が描かれた彼の栞。
いつも彼の栞の方が、物語の先を進んでいる。
先月、2人で旅行に行った。
その際に立ち寄った小さな書店。
そこで、この本を見つけた。
どこかで耳にしたタイトル。
私たちはその文庫本を、いつも交互に読んでいる。
彼が家にいる時は、彼が。彼が仕事に出掛けている時は、私が。
ケンカしているときは、お互い読むペースが遅くなる。
仲が良い時も、なぜかペースが遅くなる。
たまに、感想を話し合ったりする。
あそこの部分、良かったよね・・・・・・。
あの時の主人公の気持ち、なんか分かるな・・・・・・。
この他愛のない時間が、私は好き。
今日の朝に彼が言った言葉が、まだ耳に残っている。
私と彼の、これからのこと。
今日はたぶん、この本を読むと泣いちゃうだろうな。
私と彼をつなぐ、1冊の本。
2人がこの本を読み終えるのは、もう少し先の話。
2つの栞 執行 太樹 @shigyo-taiki
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