第6話 価値観の話

 「えぇ、こんなものまで買ったんですか?!」

 「そうそう。カルッチだってそこまで資金の計算してるならこのぐらい羽目外しても大丈夫だよ」


 愛民アイミさんが俺と同じ宝くじの当選者であることが判明した。

 そこからの会話は、結構弾んだ。


 当たったお金何に使ったんですかとか。

 貯金ってこうしますよねとか。

 当選者の先輩としてアドバイスくださいとか。


 不思議な事に、共通点が見つかると話が弾むもんだ。

 俺なんか口下手だし、女の人と話すのなんてもっと得意じゃなかったのに。


 『宝くじに当たったのに暇だな』


 思えば、その考えを他人に話すことは無かった。

 嫌味にとらえられても嫌だし。

 じゃぁお金貸してよって言われるのも嫌だったから。


 まぁ単純に友達が居ないってのはそうなんだが。


 でもー


 「ホントさ。以外と夢が無いよね、宝くじ」

 「ホントですよ!?」


 愛民アイミはおんなじ立場に居る人だから、不安もなく考えている事を話せているんだと思う。

 もしかすると愛民アイミさんも同じなんじゃないか?


 「そう言えばカルッチはさ、何か大きな買い物とかしたことないの?」

 「しいて言うなら、免許もないのに田舎に行って呪いの壺をかったぐらい」

 「何それ、面白い。ねぇねぇ今度写真撮りに行ってもいい?」

 「全然ダイジョブですよ!!アイツ変な呪いですけど、愛民アイミさんの事は襲わないでしょうし」


 二人で笑いあう。

 こんな人が彼女だったら、きっと毎日楽しいだろうな。


 「ねぇカルッチ。さっき店員さんが言ってた話だけどさ」

 「店員さんの話?」

 「私とカルッチで付き合ってみないって話」

 「ブっ?!」


 そうだった!!

 そんな話してた!!

 普通に雑談面白かったから忘れてた!!


 「私はさ、彼氏と彼女でお金のパワーバランスが崩れるのは良くないと思うんだ」

 「それはどうして?」

 「経験則だよ」


 そう言った愛民アイミさんは少し悲しそうな顔をしていた。

 

 あれ?

 もしかして俺余計な事言った感じ?


 「大丈夫。カルッチは変な事言って無いよ」

 「俺の心読んでます??」

 「カルッチは顔に出やすいよ~。この分だと、周りの一人考えてる事大体見透かされてそう」

 「反論できない」


 あれか。

 壺えもんが心読んだみたいな反応するのはそういう事か。


 「まぁ話を戻すけど、私とカルッチの資金は大体同じ。趣味は違うけど、話は合う」

 

 愛民アイミさんがボブカットの髪を揺らしてこっちをじっと見つめた。

 

 「カルッチが良いならさ、試しに付き合ってみようよ。さっきも言ったけど、こんな出会い早々無いと思うからさ」

 「い、良いんですか?!」

 「うん」


 そうして愛民アイミさんが差し出した手を俺は握り返した。



 おいおいおい。

 初彼女だよ。

 

 めっちゃテンションあがるぜ~。

 愛民アイミさん綺麗な人だしよぉ!!


 もう深夜の4時だし、さっさと風呂入って寝てこの興奮を抑えねぇと。


 「ただいま~」


 そう言って、玄関の扉を開けた瞬間の事だった。


 『お帰り。ミッションクリアおめでとう』

 「お゛め゛で と゛う゛~~」


 玄関の前にはテロップを掲げる壺えもんと謎の幽霊の群れが。


 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!なんじゃぁこれ!!」

 『驚きたいのはこっちだよ。あの短時間で何があったのさ』


 壺の中から抗議テロップが次々と現れる。

 そして、壺の周りで大量発生している幽霊どもは俺の顔をみて後方彼氏顔するし、肩ポンってするし。

 もう訳がわからねぇ。


 『それでどんな人?!どんな会話で落としたの!!詳しく教えて!!詳しく!!』

 「あ~も~!!こんな日ぐらい落ち着いて寝させてくれよ~~~!!!」

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宝くじ当たったのに人生が空虚だった……そうだ!!怪しい壺買って人生変えたろ!! アカアオ @siinsen

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