第2話 今日のおすすめは壺です。誰が何といおうと壺です
「あ、ここで大丈夫です」
次の日。
俺はありとあらゆるオカルトサイトを見回り、ガチのオカルトアイテムが売っていそうな場所を特定した。
自宅からはだいぶ遠いド田舎にそれはあった。
なんでも、その店で売っている物を買ったオカルトマニアは呪いに掛けられるって噂らしい。
噂じゃなかったら風評被害も良いところだけどな。
ま、それはともかくとして不思議だった事が一つ。
一日サイトと睨んで過ごしていたというのに虚無感を覚えなかったことだ。
何なら宝くじを当ててから一番充実した一日だった。
これあれか。
充実した生活をするなら目的が必要って奴なのかね。
「お客さん。こんな所で何するんだい?」
「ま、人生を変えに来たって所ですかね」
因みに、俺は車の免許を持っていないので移動は電車とタクシーだ。
タクシー代はそれなりにかかるが、宝くじ当ててるんだから気にしない気にしない。
「自分探しの旅ってやつか。まぁ若いんだしそれも良いだろう」
軽快に笑う運転手のおっさんに金を渡して少し歩く。
目的の店にはすぐそこだ。
◇
「いらっしゃいませ」
俺が足を踏み入れたのは古い民家を使ってアンティークを売っている店だ。
いかにもな店の外観と、所せましと敷き詰められたアンティークが噂の信憑性を高めてくる。
「やっぱ良いよなぁ。こういう雰囲気」
オカルトが好きになったのが何時だったかは忘れたけど、原因はこうしてちゃんと覚えてる。
現実を忘れさせてくれるんだよなぁ。
もしかしたら幽霊が居るかも。
このアンティークには呪いが込められてるかも。
夜中に神社に行けば面白い出会いが待っているかも。
そういう現実離れしたシチュエーションを醸し出してくれる。
くぅ、たまらん。
どうしよう。
ここで買ったアンティークに呪いがあって、物語の主人公みたいな激動の人生を歩むことになったら。
ん……呪いって事になるならホラー映画の第一犠牲者的な役回りになるか?
「呪いは『まじない』とも読めるからねぇ。良い方向に作用することもあるよ」
「うわッ?!びっくりした!!」
気づけば背後に店員さんが立っていた。
褐色肌のおとなしそうな店員さんだ。
てか、ちょっと前までカウンターで本読んでたじゃんこの人。
いつの間に背後に。
「人生、変えに来たんだろう?」
「何でそれを?」
「タクシーの方と話していたのを聞いたからね」
どんな地獄耳だよ。
だいぶ遠かったぞ、この店とタクシー。
てか妙に馴れ馴れしいし。
もしかしてこの店員も人間じゃないんじゃ。
いやいや、まさかな。
「1000円程するけど、この壺なんかおすすめだよ」
「へ、へぇ」
「あなたの人生。絶対変える。おすすめ」
「へ、へぇ」
「ね、買いたくなってきただろう??」
「へ、へぇ」
◇
「買っちまったぁぁぁぁぁぁぁぁ」
なんかあの店員さんすっごい押しが強くてさぁぁ。
本当は壺よりか身に着けられるものにしようと思ってたんだけど。
気が付けば買っちゃってたんだよなぁ。
「ま、まぁ。今までに比べたら全然刺激あったし。昨日今日と充実した生活を続けられた訳だ」
行動を変える。
その方向性はきっと間違えてない。
よし、このまますき進んで人生を変えていくぞ!!
『本当にその方法で大丈夫かい?』
「ん?」
き、気のせいだよな。
今、壺からテロップみたいなのが出たような。
『私の言う通りにすれば、きっと刺激的で楽しい毎日になるぞ』
うわぁぁぁ!!見間違いじゃねぇぇぇ!!
なんじゃぁこりゃぁぁぁぁ!!
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