第2話 おばあちゃん家を目指す
夏休みに入りました。
冒険当日――。
友だちは桃子の家に集まり、親が車で最寄り駅まで送ってくれました。
ドキドキ。しかし早くもピンチに。自分たちでおばあちゃん家を目指す冒険を提案しておいてなんですが、桃子は切符の買い方を知らなかった。
――いや違う。親が何度も買い方を指導していたのに、冒険に浮かれていた桃子はうわの空だった。
(電車の乗り間違えたらどうしよう。ちゃんと着くかな~心配だよぅ)
乗り方が書いてあるメモ帳で確認しながら、急に不安に襲われて緊張する。心臓バクバクで吐きそう。自分で冒険提案しておいて~。まったく無責任な桃子です。
「えーっと、どうするんだっけ……」
青い顔で震えだす桃子。
「とりあえずさ、駅員さんに聞こうよ」
冷静なアヤちゃん。さすが頼りになる幼なじみだ。
しっかり者の友だちといっしょに駅員さんにわけを話し、乗り換えの駅を教えてもらい、切符を買うと、たちまち元気になる!
気分はスタンド・バイ・ミー♫
Ben E. Kingの「Stand By Me」の音楽が頭の中でぐーるぐる。
電車に乗って、さあ、出発進行♫
***
仲良し三人組でゲラゲラ笑いながら電車に乗り。おばあちゃん家を目指します。街に遊びに行ったことのある大きな駅に着き、別の私鉄に乗り換えました。桃子が責任もって引っ張っていかないといけないのに、友だちが「改札口こっちだよ」「あっちだよ」と案内してくれます。(みんなしっかりしててちび桃子は楽だった)
私鉄電車の終着駅を降りると、ここから先は線路がありません。次はバスに乗ります。
(たしか、扉の横に四角い機械から、「ベー」って切符が出るからそれを取って席に座ろうっと)
この頃は、四角い機械がアカンベーしているように思えたちび桃子。
「ベー」
うんうん。ちゃんと取れたぞ。三人とも成功した。そしてバスの運転手に行先を確認すると停まるそうだ。
バスの醍醐味はなんと言っても、次の停留所のアナウンスが流れ、降りる方は、降車ボタンを押すことだ。押すとランプがピンクっぽく光るボタン。押さないと降りられないし、ちゃんと覚えておかなくちゃ。
「次は~○○~」
アナウンスが流れる。
「次だよ! 押して」
「ビィィー」
友だちが思いっきり押したが、知らない乗客が押すのが早かった。「なんだぁ~」三人はガッカリする。その後、運転手さん近くにも四角い箱が設置してあるので、お金と切符を入れてバスを降りた。
さて、ここからが問題だ。
「ねえ、桃ちゃん、おばあちゃん家はもう見える?」
リュックを背負い、すぐ着くと思っている二人は聞く。
「ううん、ここから、けっこう歩いていくよ」
「ええ⁉ 歩くの~」
二人は驚く。
「そうだよ!」
気分はスタンド・バイ・ミー♫ なので、映画よろしく線路を歩く気分で、山道を歩きます。
映画の影響で桃子に付き合わされるアヤちゃんとカナちゃんが気の毒ですね。多分、二人は映画を観ていません。ただ、桃子のおばちゃん家に泊まりに来ただけです。山道を歩くとは一応言ったけど、冒険するほどの距離なんて知らない。
さあ、ここからは桃子の記憶が頼りです。
不安そうな二人の顔。なのに桃子は自信満々でした。確かめるように景色を見渡すと笑顔で言った。
「おばあちゃん家はこっちだよー」
桃子は指をさす。一本道の先は奥の見えない山道に入るところだった。
「えっと……。本当に大丈夫?」
いつも冷静なアヤちゃんの顔が曇る。
「うん、まかせて!」
桃子はおかまいなしに、意気揚々と山道を登ろうとする。疑いながらも、二人はついていく。
ちび桃子の頭の中はBen E. Kingの「Stand By Me」が流れ、二人は困惑していただろうに、全然気がつかなかった。
まず、傾斜のある一本道を上りきると、次はくねくね道だ。いつまでかかるのかわからないくねくね地獄。桃子はだいたいの距離がわかっているが、友だちは分からない。汗だくになる三人。しかしちび桃子だけ全然疲れない。途中で尼寺を見つけ(うんうん、確かにこの道だ)知っている道を確認するようにどんどん進む。
これまでおっとりしたカナちゃんが「疲れた……」というので、くねくねの途中の車一台止められそうな場所に腰を下ろし、休憩をすることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます