第4話トラブル

黒川はいつも通り出勤して、バナナ船が入港しない日なので、書類作成してから、ハンコ押しを女性社員に任せて、現場の見回りしようとしていると、ヤードがやけに騒がしい。


「おめぇが積めって言ったから、パレットに移したんじゃねえか!」

「うるせぇ、バカか。このパレットは、小麦粉用のパレットなんだよ!」

「おめぇがバカじゃねぇのか?コレって言ったじゃねえか!」

2人の若者は胸ぐらを掴み合い、他の作業員が2人を羽交い締めにして、離していた。


「どうしたの?シュンちゃん」

シュンは、日雇い労働者歴の長いじいさんだ。

「リフトマンのヤツと、うちらの作業員がいつも通りケンカしてて、リフトマンもうちの作業員なんだけど」

「そう」

と、黒川は返事して、

「はいはい、2人とも落ち着いて。お前ら、帰れ!」

「……」

「……こ、こいつが!」

「君の聞き間違いも、リフトの人もコミュニケーション取らなきゃ。今度、ケンカしたら出禁にするからね」

2人の若者は黙ってしまった。


リフトマンはリフトを定位置に戻し、リフトを降りた。

2人とも、トボトボと帰って行った。

さて、人員が足りない。シュンちゃんはリフトに乗れるから、リフトマンをやらせて、午前中、黒川は作業着に着替えて、日雇い労働者と一緒にタマネギをコンテナから運んだ。


責任者なのだから、尻拭いはしないと行けない。

汗が滴り落ちる。

そこへ、八田が近付いてきた。


「黒川さん、ここでしたか」

「うん」

「何で、作業着姿なんです?」

「作業員2人帰しちゃったから」

「じゃ、僕も手伝います。今日は二往復で終わりなので。事務所でパソコン仕事するよりマシですから」

「悪いね」

八田もタマネギのカゴをパレットに積み始めた。

2時間かかった。


午後は、2人は汗だくになりながら、ニンジンを下ろした。


定時になると、八田は自分の会社に戻って行った。

黒川は、会社のシャワールームで汗を流してから、ワイシャツに姿に着替えて帰りの支度をしていた。

日比野課長がやってきた。

「黒川君、災難だったね。明日は休んでいいよ」

「えっ、日比野さん、明日はバナナ船が入ってくる日ですよ」

「オレも君と同じ様な仕事をしてきたから、安心して任せなさい。今夜はビール飲んで早く寝る事だ」

「……ありがとうございます」


日比野は、黒川に缶コーヒーを渡して帰った。


八田は、荒畑部長から褒められていた。

電話があったらしい。

出バンを手伝って帰ったと。

荒畑部長は黒川と一緒に飲みに行きたいのだがと言うが、明日はバナナ船の日だ。

忙しいだろうから、その事を伝えるとまたの機会にとなった。


八田は帰宅途中、銭湯に寄って帰った。会社には、いつも着替えの服と下着、お風呂セットを持ち込んでいた。

これは、昔からクセでトラック運転手は夜中まで働く事も多い。だから、一応一式置いてあるのだ。


今日は目一杯汗をかいた。

銭湯に入ってから、自宅近くの居酒屋でビールを飲んでいた。

すると、薄っすらと入れ墨が透き通って見える背中をつつく者がいた。八田が振り向くと黒川だった。

黒川は、にこりと笑って、店員に生ビールと、キンカンの煮込みを注文した。


「黒川さん」

「八田さん、今日はありがとね。ここは、奢るから、どんどん飲んで。明日、オレ休みなんだ。日比野課長が久し振りバナナ船の担当になるって意気込んでいたからね」


2人は、キンカンとハモの湯引きを食べながら、お互いのプライベートの話しをし始めた。

まだ、ご近所さんとは気付いていない。

ヒゲを剃り、髪の毛をセットした黒川の姿をみると、八田はこの人はイケメンだな。と、思った。たぶん、モテるのだろうと。

黒川は、八田の姿を見るとこの人の奥さんキレイなんだろうな。羨ましいと考えていた。


八田は、翌日は昼出勤の遅番らしくて遅くまで飲んでいても構わないと言った。嫁さんの了解も得ている。


さぁ、どうなる?

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