第5話黒川の隣人

黒川と八田は、酒を飲んでいた。

居酒屋「千代」で。

この季節だ、サワラの刺し身でビールを飲んでいた。

「八田さん、奥さんに怒られない?大丈夫?」

と、黒川はジョッキを傾けた。八田は笑い、

「大丈夫ですよ。黒川さんなら大丈夫だと言ってます。ま、うちの会社の親分ですからね」

「親分?」 

「黒川さんの会社のお陰で、うちの運送会社は持ってるんです。そう、荒畑部長も言ってましたから」

「荒畑さんねぇ〜、ドライバー時代頑張って会社を大きくしたからねぇ」

「はい。部長は黒川さんの良い事しか言わないんです。でも」

「でも?」

「何故、結婚しないのかな?って言ってました」

「……あぁ、結婚ね。半年前まではその候補がいたけど逃げられたよ。オレにはもう2度とチャンスは無いよ」

「そんな事はありませんよ」 


2人はビールで腹がパンパンになり、コーン茶割りで、とんちゃんを食べた。

コーン茶割りは甘みがあり美味しい。

とんちゃんはプリン体の塊だが、若い2人は痛風にはならない。


しばらく飲んで、2人でバスで黒川が、

「じゃ、今夜はありがとう。ここで、降りるから」

「え、僕もここが最寄りです」


2人は5分歩いて、

「黒川さん、今夜はごちそうさまでした」

と、言ってマンションのエントランスホールに向かうと、

「八田さん、ここに住んでんの?」

「はい、まさか、502号室にお住まいで?」

「そうだよ」

「僕は501号室です」

「じゃ、挨拶に来た綺麗な女性と男の子は君の家族だったのか?」

「そうだと思います」

「隣人じゃないか!」

「宜しくお願い致します。今更ですが」

「うん、また、明日ね」

「はい」

「あ、明日はオレは休みだわ」

「僕は遅番です」


「オレんちに来なさい。良いウイスキーがあるんだ」

「良いんですか?」

「良いよ。その前にシャワー浴びるから、君も着替えて来なさい」

「はい」


これが、全ての始まりだった。

1時間後、黒川の部屋のインターホンが鳴る。

扉を開くと、ジャージ姿の八田がいた。ビニール袋を持って。

袋の中身は、生チョコレートと、奥さんのお手製の唐揚げだった。


ボウモアをロックで飲み始めた。

「八田ちゃん、オレの彼女探し手伝ってくれよ」

「……良いですが、好みは?瀬戸内寂聴以外で」

「オレは吉田羊さん見たいな女性が好きなんだ」

「吉田羊さん……誰ですか?」

「知らないの?」

「はい」

「性格が柔らかい女性」

「……探してみます」 

「お願いね」 

「はいっ」


そうやって、深夜まで飲んだ。八田はお礼を言って隣の部屋に向かった。


「ただいま〜」

「あら、おかえり。相当飲んだね」

「うん。黒川さん酒強すぎ」

「やっぱり、隣のイケメンは黒川さんだったね」

「うん。女の子探さなきゃ」

「女の子?」

「早く結婚したいみたいだよ。弥生の友達で良い優しい女の子いる?」

「……探してみる。今夜は遅いから早くベッドに行こっ!子供は寝てるし」

この夫婦は2人目の子供が欲しいので、エッチ三昧。

その頃、黒川はエロ動画を観ていた。だが、下半身が反応しない。

性機能障害だった。だから、逃げられたのだ。

子供は人工受精しかないと医師に言われていた。

動画を消して、深い眠りに就いた。

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