生徒会

かもめ7440

第1話

空想の生徒会室、あるいは生徒会執行部などというところでは、

「裏の生徒会」も存在するし、「デスゲーム」も起こりうる。

―――生徒会は学校の模範。


絶対的権限といえば「大会社の御曹司」に、

「社長令嬢」と相場は決まっていて、

社長室かというような高級なアンティークの調度品が揃えられ、

生徒会室は絨毯が敷き詰められ、

会長の座る椅子などといえば、ロック機能、リクライニング機能に加え、

腰痛を予防改善する、ランバーサポートがついてくる。

もちろん「エルゴヒューマン プロ」が十万ほどの価格帯で、少し前までは、

「オカムラ コンテッサ セコンダ」という二十万ほどの価格帯の、

高級チェアーだったりする。

左右には議事録を含め、ぎっしりと書籍やファイルの詰まった書棚があり、

接客用のソファーとロー・テーブルはアコーディオンカーテンで隠れている。

背後の窓からは夕陽が射しこみ、

そこから高校のグラウンドが一目で窺え、

多忙をきわめる生徒会長は雑務に追われている。


というのは―――もちろん、嘘である。

現実における生徒会などというのは、「モブ風生徒会」であり、

NPCとさしたる代わりないもので、

生徒は活動に対して義務感で参加している割合が高く、

学校行事の伝統や慣行、顧問教師の指導などに依存する傾向が強いため、

生徒主体の立場に立って目標に立って計画・組織し活動していくといった、

自治的集団活動の基本的視点が欠落している場合の方が多い。

―――もちろん悪の組織PTAというのもおり、

モンスターペアレントという保護者もいる。


生徒会長に校長や理事長にも勝るとも劣らぬ権限など、

与えられるべくもない。

これが民主主義の本場のアメリカなどとなってくると、

「生徒に学校への参画を促す重要なポスト」といっても、

まだ少しはあなたにも信じられるかも知れない。

ただ、生徒会での仕事から、自己有用感や達成感を経て、

政治家という仕事に興味を持つ人もいるだろ―――う・・。


もちろん生徒会役員になろうとした時に、

「イジメをなくしたい」⇒『いじめ箱を設置したい』

「校内の清掃活動に力を入れたい」⇒「一か月に一度の校内清掃」

などという抱負・約束なら実現することは可能なマニフェストだ。

とはいえ、ここを履き違えてはいけない。

「全校生徒の遅刻をなくしたい」と言ったら暴言であるし、

「不登校生徒をなくしたい」と言ったら多様性を理解していない。

一般的に正しいと思われる見解は少数派にとってウザいだけなのだ。

しかしみんなが想う、いいことをする為の組織であってもいい。

地震などの復興支援募金を行うとか、

起業家や投資家を学校へ招き講演会を開催するとか、

たとえば消防士や、看護師、警察官でもいい、

そういった人達から仕事について聞くのはいいことだ。

「食堂のメニューに新しい料理を追加させたい」

というような論調でもいいだろ―――う。

そういったものならまだ実現可能だ。

「学校って一体何なんだろう」という疑問は受身だからに尽きる、

角砂糖を積んだような建物の本質は黄色い水飴である。

みんなの利益というのは掌の上の蝶のために訪れるべく言葉じゃない。


この場合のポイントは二つ。

「地域活動と密接な関り」がある、「高校大学一貫」などであれば、、

シリアスな展開になりえる要素もあるのだろうが、

現実的にはもっとはっちゃけたものだし、

なんだったら、大人がおちょくっているのかと感じるようなもの、

もっと学生らしい中身のない内容だ。

レボリューションしようぜ。

口が達者な生徒でも、人前でぺらぺら話せる生徒は稀だ。

人前でぺらぺら話せても、知性的な内容を持っているかは別の話だ。

あのね、IQ二〇〇あろうが、測定不能だろうが、

どんなカリスマ性を持っていようが、人心掌握の鬼だろうが、

現実的段階を解決するのはすべて一人一人の仕事なの。


ともあれ生徒みんなの意見を代弁する立場としての立ち位置の方が多く、

教師連中にウケが悪い生徒だっているだろう。

むしろロッカーやトイレを新しくするとか様々な申し出が飛び交う、

「課題の提案⇒話し合い⇒合意形成⇒実践⇒振り返り」の五段階、

たとえばスマホ禁止があってそこをどこまで譲歩できるかなど、

一週間に一度の定例会議での活動が主なものといえる。

改善案をまとめた企画書を作り、生徒会の顧問の先生に相談したり、

OKが出たら、教頭先生に提案し、職員会議にかけてもらう。

案件によっては、直接、職員室に直談判ということもあるだろう。


また、推薦のポイントとして生徒会活動を挙げる人もいるが、

実は内申点としてあまり影響力を持たないという話もある。

とはいえ、生徒会をやっていた生徒の頑張りを評価する向きはあるはずだ。

ただ、そのような現実の前では生徒会など中間管理職以下、

学校を牛耳るなど夢のまた夢である。

廊下を生徒会役員が歩いてもモーゼのように道を開けない、

スタープレイヤーのようなきらきらした知名度などまずなく、

生徒会役員自体が校則を破ることもあり、

そもそも当選するべく行われた選挙を、

あなたもご存知の通り、まず誰もちゃんと聞いていない。

そのような体たらくだから、一体何をしているのか全員よくわかっていない。

ただ個人的に、灘高校の生徒会はヤバさそうだなと本当に思う。

それに準ずるような学校の生徒会なら歯ごたえがあるのではないだろうか。

何しろ、東京大学に学年の約半数が進学する国内有数の進学校だ。

将来に自覚的な人であればあるほど、

そこで何処までのことが出来るのかを試したくなる人もいるだろ―――う・・。

優秀さというのは、別の可能性を与えられる人のことだ。


というようなわけで修学旅行委員とか、体育会委員という謎役職と同じく、

生徒会役員というのはマゾか、前世で徳を積んだ修行僧だと見なされる。

学校雑務や教員の下請け機関という視角野において、

ハイスペックキャラクターの必要もない。

各部活動からの報告日誌、提出書類、申請書類、

運がよければ黒板ではなくホワイトボードで、コピー機がある。

場合によっては古い段ボールの山があったり、

整理整頓の見本になりそうなピンと張りつめた空気など何処にもなく、

早く家帰ってご飯食べたいとみんな思っているかも知れない。

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生徒会 かもめ7440 @kamome7440

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