第6話

 薬により症状を抑えられるようになった為、病人の対応を医者に任せて私は葬儀の対応を初めた。


だがその間にリトルから病気について気になる話を聞いた。それは死者は減ったが無くなってはいないという事だ。


私は村人全員分の薬が用意できた今は、発見さえ遅れなければ死者は出ないと思っていた。だが医者が言うには初期症状は同一なのだが、薬を投与してしばらくすると昏睡状態に陥ってそのまま亡くなるそうだ。


私はこの件について再度天啓を願おうと考えた。基本的に天啓は月に一度が目安となる為、前回からまだ一月経っていない今は天啓が降りてこない可能性が高いが、一人でも多くの人を救う為に無視はできなかった。


リトルから話を聴いた当日は葬儀を優先し、終わった後に少しだけ天啓を祈り、その後には家族の見舞いに行った。二人は元気そうだったので安心し、明日には家に戻れるだろうと医者から聞いた。


翌日、一人の食事は今日が最後だと思いながら朝食を食べて教会へ行き、今日の分の葬儀の準備をしているとリトルが飛び込んできた。


「チルレ達の容態が変わった!」


一瞬言葉の意味が理解できなかったが、すぐに震える程の悪寒が背筋に奔る。二人で教会から飛び出し診療所へ向かった。


診療所に着くまで私は慟哭のような神への祈りを心の中で叫んでいた。診療所に着くとチルレ、ヘリン共に昏睡している状態だった。医者は再度薬を投与する準備をしていた。その顔は曇っている。


「薬を飲めば治るはずだ!」


「…もう三本目だ。これ以上は薬で体を悪くする。今助手に過去の文献で同症状のものはないか確認している。」


医者は目を伏せながらそう言った。文献があるのであれば最初から天啓を行うことはない。私はうなだれた後に思いついた。


「教会に戻って天啓が来ているか確認してくる!昨日少しやったんだ!」


「やめろ!側にいてやれ!」


リトルはそう叫んだ。その表情は強張ってるが諦めが見れた。


「もしかしたら天啓が来るかもしれない!そうすれば助けられる!」


「行くな!せめて、せめて最後ぐらい」


私はリトルを突き飛ばし、教会へ向かった。後ろから聞こえている声はもう聞き取れなかった。私は教会に戻り一心不乱に祈りをささげた。ささげ続けた。やがて外は暗くなり、そして白み始め、教会の扉が開きリトルが暗い声で私に声をかけた。

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