第4話

 翌日の朝、本堂の戸が叩かれた。リトルであった。


「ほい、メシ。あと状況だがダメだ、五人死んだ。どうも爺さんは年だから早く来たのかと思いきや、一人二十代も死んでる。最初は軽い風邪みたいだがどうも急に悪化するらしい。一応村長に言って外出に制限かけたぜ。」


リトルは普段だらしないが緊急時には頼りになる。そしてそのカンのよさは私以外にの人間も知っている。村長の決断の速さもここから来るものだろう。


「わかった。すまないが天啓はまだだ。また何かあったら教えてくれ。」


「神さまってのはお前と一緒で朝弱いのかよ。早くして欲しいもんだ。」


お互い笑い、直ぐに別れた。リトルの持ってきた食事はチルレの手製だろう。食べなれた味は旨い以上に心が落ち着いた。


次の日の昼頃にリトルから更に死んだという報告を聞いた、三時間後ぐらいに象徴が光った。私はそれに気が付き願うのをやめて吐息と共に意識を抜く。


すると頭の中にまるで直接見聞きをしたような知識と、その状況に生涯を捧げたような経験が流れ込んでくる。


天啓が終わると事を成した安堵感からか、祈りの姿勢を取り続けた故の体の痛みに気が付くが、ここからが重要である事を肝に銘じ外へ行く用意をする。


ここで天啓の内容を書いて誰かに渡せれば楽なのだが、天啓は記録に残してはならないという決め事がある。それを破ってしまうと天啓が降りなくなってしまうと父は言っていた。


子供の私は天啓を忘れないのかと問うと、天啓の内容は一文字たりとも忘れないと教えてくれた。確かに過去に受けた天啓の内容は今でも忘れていない。これも私が神を信じる理由の一つでもある。


「リトルすまない、天啓の内容からどうも薬の材料が森にあるそうだ。少し白みがかった苔から土を取り、潰した後に診療所の器具に通せばできるらしい。私は診療所に向かって医者に器具の確認と説明をしてくる。おまえは」


「わかってるよ、頭数そろえて森に行ってくるわ。なに、狩人にかかりゃ動かんもの持ってくるなんて朝飯前よ。」


「ありがとう、頼んだぞ。」


「お前も無理すんなよ、寝てないんだろ?」


「薬の説明が終わったら一休みするさ。気にかけてくれるとは随分優しいな。」


「言ってろよ。」


そう言って二人で少し笑い、親友と別れた。私は急いで診療所に向かい、器具の確認と説明をした。


村医者も患者の対応で軽くまいっていたが、私の話を真剣に聞いてくれた。薬を作る器具は埃をかぶっていたが、二人で洗浄し、組み立て直した。


私が家に戻った頃にはすっかりと暗くなっていた。ろうそくの灯で食べ物を照らし、食事もそこそこに布団に滑り込む。二日間まともに寝ていない身故に倒れるように寝た。そうでなければ妻と娘の咳を聞き損ねるはずがない。

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