第17話 資源の探索へ

「よし、これで保安班の人数分はできたな」


 ゴブリン撃退後、おれはさっそく魔法銃スペルシューターを複数製作した。


 肝心の魔石はひとつしかなかったので、小さく割って各魔法銃スペルシューターに装着させている。破片となった魔石の魔力量では、発射可能数はかなり減る。しかし魔力の質はそのままなので威力は変わらない。


 これらをゲンたち保安班に装備させた。


「無駄撃ちするとすぐ使えなくなる。いざというときにだけ使えよ」


「ありがとうウィル、心強いよ」


「やっぱウィル様はすげえぜ、これでゴブリンなんか怖くねえ!」


「あまり慢心はするなよ。当てられなければ意味がないんだ」


 本当なら訓練させてやりたいところだが、それは難しい。


 消費された魔石の魔力は、補充することは出来ない。魔力が切れたら、ただの石になってしまうのだ。


 魔法銃スペルシューターの弾数を気にせず撃てるようにするには、充分な数の魔石を手に入れるしかない。


 今後の防衛戦力の維持・拡充のためにも、安定して魔石を採掘できる場所を探す必要がある。


 アテはなくもない。


 おれたちが働かされていた鉱山では、たまに魔石も採掘されていた。そこからあまり離れていないこの付近なら、どこかで鉱脈が見つかるかもしれない。


「では行ってくる。基地の安全は任せたぞ、ゲン」


「ああ、任された」


「ちょっと待って……!」


 出発直前、クラリスが駆け寄ってきた。


「ウィル様、ひとりで行っちゃうの?」


「ひとりのほうが魔物モンスターに見つかりにくい。探索だけなら充分だ」


「でも万が一があったら危ないよ」


「おれはこの中で一番強い。なにかあっても問題はない」


「でも……でも……」


 訴えるように青い瞳でジッと見つめてくる。


 ぽん、とゲンが俺の肩を叩いた。


「一緒に行きたいんだ。連れて行ってあげたら」


「しかしクラリスは重要な防衛戦力でもある。おれひとりのために使うわけには――」


「なに言ってるんだ。俺たちは、お前がいなきゃこの先やっていけるか分からないんだ。一番大事な人間を、強い戦力で護衛する。当たり前だろう?」


 クラリスも、こくこくと何度も頷いてみせる。


「ぜひ、わたしも連れて行くべき」


 その様子に、心が安らいでしまう。


 前世では、自ら護衛を申し出るような者はいなかった。護衛の人造人間アンドロイドは常に付いてきていたが、あれはそうプログラムしたからだ。クラリスのように自発的に動いてくれるのは、正直、嬉しい。


 その自発性を無下にはできない。


 それにゲンたち保安班には魔法銃スペルシューターもある。防衛戦力としては充分なはずだ。


「わかった。おれに付いてこい、クラリス」


「うんっ、一緒だよ、ウィル様!」


 こうして、おれとクラリスはふたりで探索へ出発した。


 周囲の地面に魔力の反応がないか調べながら進んでいく。


 おれの『慧眼の賢者ワイズマン』の解析でも可能だが、クラリスは魔法で魔力を探知していた。探知範囲はその魔法のほうが広く、おれもその技術を真似て探索を進めた。


「えへへっ、わたし、役に立った? 連れてきて良かった?」


「ああ、連れてきて良かった。やはりクラリスは頼りになるな」


 褒めてやるとますます嬉しそうに、恥ずかしそうに目を細めるクラリスだった。


 やがて魔石の鉱脈らしき反応を見つける。洞窟だ。


 さっそく足を踏み入れようとしたとき――。


「お前たち、許さないぞ!」


 叫びが上がった。


 かと思うと、ぞろぞろと狼型の魔物モンスターが現れた。素早くおれたちの周囲を取り囲む。大きさと毛皮の色から推測して、ダイアウルフの群れか。


 さらに、ダイアウルフにまたがった、赤毛の少女が現れた。動物の毛皮で作った服をまとい、骨を削って作った槍を持っている。


「よくも、あたしの家族を傷つけたな!」


 彼女の右手の甲にあるのは、Fランク民の印だった。




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